ねこのまつりでつかまえて｜リアクション

ねこのまつりでつかまえて

　桜花寮への道を、佐藤英二と野々ののこはならんで歩いている。
「今日は楽しかった？」
　わかりきっていることだけど、英二はこう聞かずにはいられなかった。
　ずっとののこは笑顔だった。ずっと、きゃっきゃとはしゃいでいた。よかった、と英二は思う。本当によかった。
　ところが、イエスと言うことを期待したのに、ののこは自分の靴に視線を落とし首を振ったのである。
「……ううん」
「えっ！　僕なにか……」
「ちがうちがう」
　顔を上げたののこは、にぱっと満面の笑みだった。
「ただ『楽しかった』んじゃなくて、超！　ちょおおお！　楽しかった！！」

　取材メモを読み返しながら、ほくほく顔で椿美咲紀も帰路についていた。
　自宅で彼女を待つ猫たちに、お土産もたくさん買った。さすが猫のまつり、猫用のオモチャなんかも、それこそ迷って頭を抱えるくらいたくさん種類があったのである。とりあえず今回はシーサイドなタウンらしく、さんまとマンボウの蹴りぐるみなど、一通り海洋生物でまとめている。
「お」
　美咲紀は行く手に見知った後ろ姿を見つける。
　ののこと英二だ。ののことは何だかんだと縁があるし、英二はクラスメートである。
「取材……」
　と走りかけるも、美咲紀はやめておくことにした。
　なんというか、おジャマかな、と思ったからだった。
　もう今日は、ICレコーダーもオフにしよう。

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