脱いで！　笑って！　世界を救って？！｜リアクション

脱いで！　笑って！　世界を救って？！

　――本気のやりあいなんざ十二支団ができてからずいぶんやってねえが、久々に手合わせといこうじゃないか

　コルからの提案にティクスは片目を開けながら「ようは戦いたいわけか」と納得した。当初はスサを探すほうに回ろうか、と考えていたのだが珍しく指示を出す前にコルから話が出、興味を持ったのだ。
　コルは見栄えが良くて嫌味さのない、お洒落な戦衣に身を包んでいた。ティクスはティクスで借りた２本のナイフを弄びつつ相手の出方を探る。
（折角のパフォーマンスだ。派手にいかせてもらうぜ！）
　コルはにやっ、と笑うと咆哮をあげ、剣を技と大きく振る。同時にティンパニーに似た楽器が戦いの始まりを告げ、演奏が開始される。ティクスは身を低くして一歩踏み出し、剣の動きを予想する。
（闇にまぎれられねえのは好まねえが……）
　そして、迫る銀色を避けナイフの一撃をコル（の服）に喰らわせた。だが、避けたはずの一撃はわずかにかすめ、ティクスの服の袖が引き裂かれていた。

「やるからには半端はなしだ、コル。全裸にならない様に祈るんだなっ！」

「おぅよ！」
　コルが、ティクスの啖呵に笑顔で答える。だが、脳裏ではこうも考えていた。
　――加減はどうせアイツが上手くやるだろう、と。

　コルは剣を布に引っ掛けてティクスの衣服を切り裂いていくようだ。ティクスは破れた袖を見つつ僅かに苦笑した。
「っと、こっちも少しやられたか。……まったく、頼りになる料理番だ」
　コルに聞こえないほど小さな声は歓声にかき消される。ティクスは再び襲い掛かるコルの剣と己のナイフをぶつけながらも、時にリズミカルな斬撃を放つ。普通に攻めたところで面白みが無いのでは？　と考えたからだ。
　いくつもの銀色の煌きが光に弾かれ、その度に互いの衣服が破れていく。そして、歓声が上がった。
「なるほど、こういう手もありか……」
　本業が盗賊であるティオレ・ユリウェイスがうんうんと頷く。未だ気絶している真境名アリサも、この２人の演舞をみたらそう思うだろう。ウズメはウズメで興奮した様子で見入っている。
（あぁ、やっぱり……無駄な動きもないし、綺麗だな）
　なんとなくコルはティクスの動きを見て、彼とであった時の事を思い出す。だが、裂かれた衣装の音で我に帰り、剣を閃かせた。コルのねずみしっぽが空に踊り、その１撃を交わすも背中を掠めて大きく破れる。
（やられっぱなしは尺だな）
　と、技とリズムから外して手数で攻めれば、再び衣装が千切れて舞い散る。隙間から見えるスマートな身体に、ギャラリーの興奮も高まっていく。
　ティオレとアリサは舞いながら衣装を裂いたり斬ったりして脱いでいった。確かに踊りながらというのは観客のテンションを煽るのに効果的だろう。だが、ここに戦闘という要素を加える事で『どれだけ脱いでくれるのか』という期待だけではなく『どちらが勝利するのか』というハラハラ感が加えられ、より興奮するのだ！！
「おおっと！　コル選手の一撃によりティクス選手の衣服が大胆に引き裂かれたぁ！　だがまだ終わってはいない！　ティクス選手の連続攻撃！　重なる正確な攻撃が派手にコル選手の衣装を散らしていく！！」
「絶妙な力加減により相手の身体には傷つけず、衣装のみを切ることができていると思われる。つまり、この２人はかなりの手馴れという事だな」
　武道がテンション高く実況し、ティオレが解説席に座る（ただし胸の一部は彼女の○ンドウポーズによって隠れている）。
　観客の歓声を浴びながら、コルは「しゃらくせぇ！」とばかりに笑って剣を捨てる（コル「剣はリーチが長いのがいいが、懐に入られるとむしろ邪魔」）。どうやら彼のテンションもますますあがっていたらしい。彼自慢の爪が閃けば、また派手に衣装が散る。
（ったく、楽しんでやがるな、コルの奴）
　ステージの上、戦いに相応しいアップテンポの中でティクスが呆れたように苦笑する。だがそれは、自分も同じで。その高揚を押し隠すように苦笑する。その間にも爪が閃き、バックステップでかわす。
（しかしコルの爪を正面から受けたら大怪我じゃすまなさそうだ）
　これはあくまで脱がしあいが目的のパフォーマンスである。服ごともって行かれない様になるべく回避しつつも、相手の衣服を破ることに専念する。勿論、派手さにも気を配って。

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