５月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

５月の☆ハッピーバースデー

●３日

　丹羽紅葉は、ウォルター・Bを探していた。

（職員室にもいらっしゃらなかったし……）
　手には白い造花とリボンで飾られたペーパーバッグ。逸る気持ちが紅葉の背を押す。
　そして職員玄関で彼の姿を見つけると、自然と紅葉の顔に笑みが広がる。紅葉はいつもより少し大きな弾む声で呼びかけた。
「ウォルター先生！」
　くるりと振り返ったウォルターの碧眼が、楽しそうに細められた。
「ああ、丹羽じゃないか」

「先生、あの……」
　紅葉は小走りに駆け寄ると、その豊かな胸に手を当て、ちょっと深呼吸。笑顔でウォルターにペーパーバッグを差し出した。
「先生、今日お誕生日でしたよね。良ければこれ……どうぞ！」
「ああ、ありがとう！　またおじさんに近付いたけど、やっぱ祝われると嬉しいねぇ」
　少年のように笑いながら、ウォルターは紅葉のプレゼントを受け取る。そして小首を傾げて紅葉を見た。
「開けてもいい？」
「はい、勿論です」
　そう言いながらも紅葉の胸はドキドキする。……気に入って頂けるかしら？

「可愛らしいケーキだねぇ」
　セロファンでラッピングされた掌サイズのチョコケーキに、ウォルターがにっこりした。
「オレンジソースが入ってるんです」
「ああ、それは美味しそうだなぁ。ありがとう」
　ふふと微笑みながら、ウォルターは今度は細長い箱を開ける。その瞳が輝いた。
「わぁ、扇子だ！　綺麗な花が描かれてるねぇ」
「白万重です。先生の誕生花でもあるんですよ」
「そうなんだ。これ、華道部の時にも持って行こう」
　そう言って満足げに扇子をあおぐウォルターの姿は、まるでその白万重のように凜として美しい。紅葉は大好きな顧問に心からの言葉を伝えた。

「先生。いつも華道部を見て頂きありがとうございます。……お誕生日、おめでとうございます！」