５月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

５月の☆ハッピーバースデー

●１７日

（先生、いらっしゃるかしら）
　丹羽紅葉が職員室を覗いていると、奥の方から爽やかな声がした。
「あれ、紅葉。どうしたのー？」
　紅葉の担任若林沙穂だ。
（よかった！）
　紅葉は「失礼します！」と頭を下げると職員室に入っていった。

「あの、先生？」
「うん？」
　こちらを向いた沙穂に、紅葉は赤紫の造花とリボンがあしらわれたペーパーバッグを差し出した。
「お誕生日おめでとうございます。これ、プレゼントです！」
「え？」
　沙穂はちょっと驚いたようだったが、すぐに笑顔になった。
「ありがとう、紅葉。嬉しいよ」
　その言葉に紅葉の顔にも笑顔が広がる。「開けてもいい？」と訊く沙穂にこくりと頷いた。

「わ、これはチョコケーキだね。美味しそう」
　沙穂は可愛らしいケーキを見て目を細める。
「手作りですけど、お口に合えば嬉しいです」
　紅葉の言葉に「わ、凄い！」と沙穂は驚くと、
「女子の貴重な手作りお菓子……ありがたく頂くね」
とウインクした。自分も女子だろうと突っ込みたくなるが、それが沙穂なのだろう。紅葉がくすくす笑う中、沙穂はもう１つの包みを開けた。
「わあ……！」
　沙穂の頬が淡く染まった。沙穂の手に載せられたのは釣り鐘型のイヤリングと、二色の布地で出来た鮮やかなシュシュ。
「素敵ねぇ……あれ、この色と形……」
　流石美術の先生だわと思いながら、紅葉が言った。
「はい、紙袋につけた造花と一緒です。フクシア……先生の誕生花らしかったので、それに合わせてみました」
「ああ、そうなのね。綺麗で可愛らしい花」
　沙穂は笑顔で頷き、紅葉を見た。
「ありがとう、紅葉。また１年、一緒に頑張ろうね」
　沙穂の言葉に、紅葉もとびきりの笑顔で答えた。

「はい、先生。先生が私の先生で本当に良かった……！」