【恥じらい転じて福となす】

「そんな奥義などに興味はない。欲しいヤツらで勝手に、脱がし合いでもなんでもすればいいだろう……」
　眉間にシワを寄せ、獅子目 悠月は静かにやる気ナシ。
　そんな彼の扱いを心得ているのが、オルカ・ヴィヴァルディでアル。
「へ～え？　ふ～ん？　じゃ悠月は負けを認めて、自分から脱ぐってことかな～？」
「な……っ」
　にまりと口の端を上げてみせれば、悠月の眉間にはさらに深くシワが刻まれ、オルカの思惑ばちりというところネ。
　悠月があたりを見回せば、九夜泉郷には多くの女子たちの姿が見えたアル。ここで自分から脱ぐのは、変質者と変わらない……と、きっとキマジメな悠月などは思たアルネ。
「……誰がそんなことを言った。興味はないが……負けるつもりはない」
「そうこなくっちゃ！　脱がし合いだなんて、悠月がいなくちゃ楽しくないからね～」
　オルカが上着を脱ぎ去ると、ぴっちりブーメランパンツ姿。彼もまた海原流脱衣真拳ブーメランパンツ派の拳士アル。
　対する悠月は自然体、合気道の構え。
「ふ～ん……？」
「な、なんだ。戦うんだろう？　来いっ」
　オルカは悠月の全身をじろじろ。舐めるように見つめて、
「悠月の道着は、何だかガードが固いね～。Non va bene（良くないな）！　もっと開放的にいかなきゃ～」
「う、うるさいな。これは別に道着では……」
「ねえそれ何て道着？　何て流派～？」
　悠月の頬が、惚（ぽっ）と灯たアル。
　何しろ彼が身に着けているのは、裸にワイシャツ一枚。羞恥に顔を真っ赤に染めて、悠月はつぶやいたヨ。
「……ツ派……」
「え？　なになに？」

「……彼シャツ派、だっ……！」
　度紅ン（どくん）。オルカの目の色が変わたのを見て、悠月は気付いたアル。どうやらマズイことを口にしたらしい、と。
「オルカ？」
「それ……もしかして、下……履いてない……？」
　その通り！
　思わずシャツの裾を押さえてしまたのが運の尽きだたアルナ。
「……がぜんヤル気が出てきたよ、amore mio！」
「ば、馬鹿か！？　いや馬鹿だろう！？　なんでそこでやる気が出るんだ……って、ちょっちょっと待て！」
　言うが早いかオルカは爪先でリズムを刻み、大ジャンプ！　かーらーのー、飛び蹴り！！
　悠月のシャツの胸元にぶち当たり、破ァン！　ちょうど見える？　見えない？　くらいのところが吹き飛んだアル。
「ちぇ、惜しい。でも楽しいね～これ！」
「楽しくないッ！」
「ちょっと本気で行くから、覚悟してね～？」
「くっ……ただで脱がされてたまるか！」
　赤面しつつも身構えた悠月も合気道のウデはなかなかアルが、明らかに気迫で負けてるネ。
　ココだけの話、スポポンに剥かれるのも時間の問題と見たケドネ？
「やかましい！！」



　その時、羽生 碧南は混乱の真ただ中にいたアル。
「えっ門下生？　何？　私は何でスク水を着てるの！？」
「なんかねー、脱がさないと脱がされちゃうらしいわよ？」
　隣の入江 みつびとて分かているわけではないが、今は馬闘流露井屋留の真最中（まさいちゅう）。隙を見せれば脱がされるは必定というものヨ。
　碧南と同じスク水派の男女が図羅理（ずらり）と二人を取り囲み、武器を手に襲いかかるアル！
「か～ま～ぼ～こ～、三段蹴りィーーー！！」
　暴固暴固暴固（ぼこぼこぼこっ）！！
　アイヤーお見事！　さすが海原流の中でも新興ながら破竹の勢いで勢力を拡大する、かまぼこボビナム純情派の拳士アル。敵らのスク水は千理千理（ちりぢり）になて弾け飛んでしまたネ。
「いやー。このみつびんの白魚のようなアキレス腱を、目つきの危うい猛者どもが狙ってると思うと……ぞくぞくするね！」
「きゃあああ！？」
　もちろん、碧南にも敵は襲いかかるアル。
　佐亜歩印（さあふぃん）で鍛えたみつびの美脚はもちろんのこと、碧南もまた180cmの長身で目立つ上、馬巣蹴斗暴流（ばすけっとぼうる）選手の引き締まったボディにモデル体型でアルからして、特に女子たちの嫉妬的視線はことさらキョーレツであたネ。
「ちょっちょっちょ、来ないでー！？　私はそんな奥義なんていらないし、第一パンチで服を破ったりできないし！！」
「大丈夫、ほら構えて構えて！」
　絶えず飛びかかる男子を暴固暴固に蹴倒しながら、みつびは告げたアル。
「戦う力なら、もう持ってるはずよー！」
「戦う……力？」
　瞬間。碧南はスク水派の門下生が使ていたのだろうナイフを拾い上げると、
「……たああああッ！！」
　流れるように淀みない動きで須羽羽羽羽（すぱぱぱぱ）！
「師父があの人なら、奥義もきっとロクでもないものだろうし、欲しくないけど……」
　ひどい言われようの海原師父アルが、ともかく碧南も今や海原流脱衣真拳スク水派の門下生。おまけにひとたび戦場に立た彼女は『戦う女』へと切り替わり、即座に臨戦態勢アル。
　ナイフに刻まれた相手のスク水は粉々となり、全裸で逃げてゆく彼らに背を向け、身構える碧南。
「勝負に臨むなら、勝たねば意味がない。こうなったら私も、全力でいかせてもらうわ！」
「そーそー、その調子♪　……それにしても、熱いわねー！」
　みつびはかまぼこ蹴りで並み居る敵を蹴り倒し、碧南は映画さながらの華麗なナイフ捌きを披露。
　破、破、破破破ン！　と次々に道着の胸やら尻やらを吹き飛ばしていると、
「ああっ……脱がすのって、快感かも」
「何だか、私まで脱ぎたくなってきちゃったー♪」
　立ち昇る湯気は、何を隠そう『ストリップ湯』のもの。
　碧南はスク水のみ故脱ぎようがないアルが、みつびは身に着けた道着を妖艶に、焦らすように、見せつけながらにするりと脱ぎ去ると、
「見よ、このマーメイドもビックリなアコヤ貝ブラ！　まあこれ、端っこがちょっと肌にこすれてイタかったりするんだけど。中に隠れた双子のピンクパール（意味深）は、完璧にガードしちゃうんだからね☆」
　自分から脱いどいて何を言てるカ？

参考イメージ：バレンタインのみつびさん
　まー温泉の効能のせいアルが、ともかくみつびの脱ぎっぷりに思わず見とれた男子諸兄の道着を、見事かまぼこ蹴りで討ち取たアルヨ。
「なかなかやるわね……！　でも、私だって負けないんだから。脱がして脱がして脱がしまくってやるわ！」
「なんの、水際のみつびちゃんは無敵なんだからー！　そぉ～れ、かまぼこぼこぼこ～！！」
　湧き上がる脱衣衝動をも押さえ込みながら、二人はひとまずの共闘体制。襲いかかるライバルを軒並み撃退してゆくのでアル！