【とても健全でらっ倫とも関係ないお話】

　湯気に見透かす影二つ。相対したなら脱がし合う、これ『馬闘流露井屋留』の非情なしきたりネ。
　片や、海原流脱衣真拳助平インナー派、七峯 鷹梅。筋肉質で大柄な女子アル。上下で衣を一つにする道着はまるで和風ボンデージというところカ？
「どんな布も、いずれ断てば同じ事です。死力を尽くして、いざ！」
「く、ふふ……！　なんと素晴らしい、『海原流脱衣真拳』……ッ！！」
　片や着込んだスク水（もちろん女子用）の胸には、『3-9　明智』の文字。


　アケーチ・タッマーキ……控え目に言ても、こいつァすこぶる変態アル！
「ぜひ私が後継者となり、この世を裸と美で包みたいものです。あなたも身ぐるみ剥がせていただきます、ひん剥かせていただきますとも！」
「ええ、女とて遠慮は無用ですよ。参ります」
　まずは先制。鷹梅の武器は腰の居合刀、それにいわゆるコンパウンドボウ。複合弓とも呼ばれ、てこの原理と複合素材を用いた現代弓を義理理（ぎりり）と引き絞り、朱馬（しゅば）！
　正しく矢継ぎ早に放たれるのは鉤のついた鏑矢。図度度度度（ずどどどどっ）と地に突き立ち、かすめたアケーチのスク水が徐々に裂けていくアル。
　アケーチは焦りを見せて、
「ああっ、このフィット感に締め付け……そして徐々に剥かれていくこの解放感ッ！　たまりません！」
　焦るどころか喜んでたアル。こいつァすこぶる変態アル！
　アケーチはもちろん海原流脱衣真拳スク水派。海原流の中でも言わずと知れた主流派アルが、男子の使い手は比較的珍しいネ。
「ふ、ふふ。かまいたち明智と（妄想の中で）異名を取るこの私！」
「かまいたち？」
「全ての衣服を切り裂き、この世界をスッポンポンに導いて差し上げましょう……必殺・タッマーキスラッシューーー！！」
　図場場場場場！！　どーいうリクツか真空を操るアケーチの秘技が炸裂して、鷹梅の助平インナーに大きく切れ目が開いたアル。
「なるほど……なかなかやりますね」
「そちらこそ！　ああ、その引き締まった素晴らしい肉体を白日のもとへ晒したい、開放して差し上げたい！」
　身構えて対峙する両者、拮抗！
　と、その時のことだたアル。
「海原流の秘奥義……危ない人に渡すわけにはいきません！」
　凛、と鈴が鳴るような声。
　飛沫が上がり、向かい合う二人の間へ乱入するのは、海原流脱衣真拳パレオ派、シーナ・キュクノス！　ネック巻きのパレオに紐ビキニを身に着けた、これでもまごうことなき男子アル。
　円の動きで漂（ひょう）と剣を振るい、アケーチのスク水と鷹梅のインナーを際どく斬り裂いたシーナ。その拍子にパレオが舞羽（ぶわっ）と巻き上がり、桃色の乳首が散理（ちらり）。
　……男子だから問題ないアル！　これは健全な武術のお話ですアルヨ！
「まぁ、ちょっと恥ずかしいけど。でもヤルからには全力でいきますよ！　下着だけを脱がせる奥義なんて聞いて張り切ってる人には、ますますそんなもの渡せない！」
　剣を構えたところで、三つ巴！
　……かと思いきや、アル。シーナは気付いたネ。
「ほう……」
「……ふ、ふふ！」
「えっ？　な、なんですか？　あれっ？」
　鷹梅とアケーチが、据わた目で自分を舐めるように見ていることに。
「可愛らしい子がきましたね。これは剥きがいがありそうです」
「この可憐さ、なんて素晴らしい！　ぜひスッポンポンにして差し上げなくては。く、ふふっ」
「ええーっ、なんか二対一！？」
　アケーチはこれ平常運転アルが、鷹梅の正気もまたいささか疑わしいことは、知人なら気づいたかもネ。
　実は三人が足を浸しているこの湯はその名も、『マタタビ湯』！　言わずもがな、浸かたり湯気を浴びたりするとマタタビを吸た猫のようにフニャフニャのヘロヘロ状態になてしまう温泉アル。つまりこれ、二人とも酔ぱらてるヨ。
　ハイなアケーチは、両手を広げて高速回転！
「まとめて剥かせていただきますっ、アケーチタイッフゥーーーン！！」
「わ、わわっ！？」
　竜巻と化したアケーチが急襲し、シーナと鷹梅を真空の刃が襲うアル！
　鷹梅は道着を半ばほど切り裂かれ、カチカチの腹筋が露わとなりつつも、手をかけたのは居合刀の柄。
「拳法とは即ち、在り様。得物は拘りなく扱えてこその武術です」
「うわーーーっ！？」
　射金（しゃきん）！！　刹那の風が走り抜けたかと思うと、次の瞬間刀は鞘へ収まり、シーナのパレオだけが裂けて桃色乳首が散散理（ちらちらり）。
　両者恐るべき使い手なれど、もちろんシーナもされるがままではいられないアル。
「ううっ、恥ずかしい……でも、僕だって！」
　すぐさま剣を振り抜けば、アケーチの胸元が朱羽と切り裂かれ、内から覗くのは乳首に張り付けられた……絆創膏？
「おやおや、積極的ですね。これは嬉しい……ふ、ふふ！」
　即座に踏み込み、シーナの耳元でひと言。
「そんなに私のプリ尻が見たいのですね」
「ひ、ひぇぇ……！」
　生存本能とゆーヤツアルか？　シーナが目にも止まらぬ速さで剣を振り、アケーチを追い払た……ところへ、鷹梅が強襲。二人めがけて鏑矢の雨あられ！
「なるほど、この湯は危険ですね。しかし足元が覚束なければ服は揺れ、私には射易い」
　弓と居合、近接格闘と射撃を組み合わせ怒涛の如く攻め立てる鷹梅。
　独自の体捌きで翻弄するアケーチ。
「こ、このままじゃまずい……あれ？　な、なんか足が」
　マタタビヘロヘロ状態のへっぴり腰で剣を構えたシーナ。
　三つ巴の戦いは、ますます激しさを増してゆくのでアル！

↑参考資料：素面のシーナくん