大人は知らない、子どもたちの居場所｜リアクション

大人は知らない、子どもたちの居場所

【スクレのタルトタタン】

　その日、曖浜瑠樹くんは、初めてスクレにやってきました。
「わぁ、カプギアが遊べる場所もあるんだねぇ～」
　うさぎのカプギアラズちゃんを持つギアマスターでもある瑠樹くんにとってはそれも嬉しいところ。
「でも、せっかくだからまず何か食べたいねぇ」
　と、瑠樹くんが思ったそのとき、
「店主、ジュースとタルトタタンを貰えるか！」
　やはりこの店に訪れるのは初めてだった煌白燕さんがお店の人にそう注文する姿が目に飛び込んできました。
（タルトタタン？　面白そうな名前だねぇ）
　瑠樹くんがそう思ったまさにそのとき、
「こんちは～♪　タルトタタンとメロンソーダください」
「あ、私もホットコーヒーとタルトタタンね」
　さらにお店にやってきた二人のお客さん――白石龍樹くんと仙藤蒼さんも同じタルトタタンを注文したのでした。
（わあ、３人も頼んでるよぉ。きっとほっぺたが落ちるぐらいうまいんだろうねぇ～）
　そう思えば居ても立ってもいられなくなる瑠樹くん。
「すみませーん、オレにもタルトタタン１つくーださい！」
　次の瞬間には、瑠樹くんもやはり同じものを注文し、スクレには瞬く間に４つのタルトタタンのオーダーが入ったのでした。

　　＊　＊　＊

　さて、そんな４人の姿を先客の桃井かんなさんはおませな顔で眺めていました。
「ふーん。あんたたちもタルトタタン食べるんだ」
　ぽつり、とかんなさんがそう呟けば、
「お、かんなちゃんじゃん」
「あ、本当だ。桃井さんだぁ、こんにちはぁ」
　と、瑠樹くんと龍樹くんが手を振って応じます。
「……そんな大きな声出さなくても聞こえてるって」
　ぷいっとそっけなく対応してしまうのは、かんなさんなりの照れ隠しなのかもしれません。
「龍樹、そなたもタルトタタンか。私と同じだな」
　と、そこで白燕さんも会話に入ってきて、瞬く間にスクレは元気な子供達でいっぱいになりました。
「お、ぱいえんもタルトタタンか！　よし、タルトタタン食ったら皆でギアバトルやろうぜ！」
　龍樹くんは、かんなさんとは『ぐらぐら』のイベントで共に戦い抜いたギアマスター。
　白燕さんも、カプセルギア――サンゴクナイトを持つ立派なギアマスターでしたから、龍樹くんがそんな提案をしたのは自然な流れだったかもしれません。
「へぇ、あんた達もカプギア持ってるんだねぇ。じつはオレも持ってるんだぁ～」
　と、そこで瑠樹くんがラズちゃんを取りだせば、
「ふーん。キミたちもカプギアやるんだ」
　いつのまにやら蒼さんも飴玉を片手に、首を突っ込み、なにやら今にもギアバトルが始まってしまいそうな予感。
「よし、じゃあタルトタタンが来る前に軽くバトろーぜ！」
「うん、わかったよぉ～」
　案の定、元気よくギアバトルの開始を宣言した龍樹くんや瑠樹くんをチラと見て、

「……男子ってほんとバカ」

　かんなさんは小学生女子らしからぬアンニュイ（でもちょっと楽しそう？）な表情を浮かべて、タルトタタンをまた一欠けら口に運ぶのでした。

このページにイラストを設定する