オニハ　ウチ｜リアクション

オニハ　ウチ

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　一方こちらでは、心身の強さ故かはたまた最初から自身に巣食うモノを無意識下で受け入れているからか、神魂の影響受ける事なくしかして周囲の異変に気付いてしまった柳内みことが、周辺観察後どうしたものかと立ち尽くしていた。
　――　鬼の角まで生えている方がいらっしゃいますわね……心の豹変を起こしておられる方も。
　観察眼の賜物にて、何となくの事態を察しはしたものの。
　本来であれば、己に被害が無ければそのまま放っておいても良いかと結論づけるところであるが。
　――　……何故でしょう。とても気になって。
　自身の胸に手をあてる。
　このままでは、その内色々と面倒なことになりそう、だからだ。
　そう思うようにしながら、さて解決に乗り出してみようかと考えるも、まず何をしたものか。
　途方に暮れそうになった瞳に、ふと、果物屋でお買い物をしている人の姿が映った。
　あ。あの人にも角がある……。見つけては少し眺めていたらば、お店の人からご試食どうぞと差し出された桃を角の生えた人物が食べた瞬間。

「……あら？　角、なくなりました、よね……」

　気のせいで無ければ、もしやこれが元に戻る糸口？　と思案して。
　他に手段など思いつかない。ならば実行あるのみ。
　みこと、すちゃっとお財布を取り出すと自らも果物屋さんへと乗り込むと、一番安い桃をあるだけ買い占めた。
　――　ああ……お安いと言えど高校生程度の財力ではやはり痛いですわ……。
　軽くなったお財布にやや遠い目になりつつも、善は急げと持ち前の実行力をフル稼働。
　この時間、もっとも人が通りそうなキャットロード歩道脇まで来ると、商店街にいる方に『課外の社会授業で』と上手な理由を付けては長机とクロスをお借りして。
　ファサァッと引かれたクロスの上に、カッティングした桃たちを紙皿に乗せ爪楊枝を刺していく。

「準備完了ですわ」

　深く深呼吸した後、みことは商店街に溶け込む音量で声を張った。
　『こちら、地域名産物の紹介をしております～。新鮮な桃などいかがでしょうか～』
　そう告げながら、道行く人にひたすらに配って回り始める。
　角の生えた人はともかく、心乱れた人は傍目には分かりにくいと判断し、片っ端から特効薬らしい桃を食べさせていこうという算段である。
　――　これで、不本意に鬼になっている方が治せれば良いのですが……。
　時に、鬼の角による能力か、やたら怪力な人や喋る度にライター程度の火を吐く人など、下手をすると怪我に繋がりかねない者たちもやって来るも、表面的な笑顔を決して崩す事無くあくまで温和に、みことは応対していく。
　逆に心乱れる人は、素直に試食してくれない者もおり苦労することもあったけれど。
　――　どこか生き生きなさっているようで少し羨まし……コホン、気のせいですわね。
　暴走状態とも言えるが、心のままに振る舞える姿はみことに不快感を与える事なく、むしろいつもより熱の籠った目を向けている自身を時折取り繕ったり。
　商店街にて、ひたすらに根気強さ発揮すれば、いつしか商店街から鬼の気配が少なくなっていくのであった。

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