人でないモノ、災いをもたらすモノ、神秘なモノ、または……人の身の奥に棲まうモノ。
なにをもって『鬼』と呼ぶのか、神魂すら分からなかったのかもしれない。
ただ突然引かれるように、惹かれるように、少しずつ人へと影響を与え始める。
『鬼』という言の葉、イメージ、力、それらに導かれるように。
◇
一見、本日も のほほん日和な島内にて。
御巫 時子は買い物の真っ最中。
―― 消耗品の買い足しはこんな感じ、でしょうか。そういえば……明日の先生のお弁当、次は何を入れましょう……。
デパートから出てくれば八百屋が目に入り、思案しながら足を向ける。
お野菜は、まだありましたよ、ね……。
一通り眺めてみるも、必要そうな物は無いと判断してはお店の人に『また、今度買いにきます、ね』などと会釈して。
踵を返して歩く事数十歩。後ろの方から何やらざわついた声がした気がした。
何故こんな時期に霜が!? そんな言葉と共に八百屋の前に少々の人だかりが見える。
「? 何か、あったんでしょうか……」
首を傾げる時子の額には本来は勿論無いであろう、フツウの人には見えないらしい角が2本。
そこまでの異変には感じなければ、気にせず再び帰路につく。
その体から、冷気を霧のように撒きながら……。
◇
「な、なんだ、どうしてだ……」
お礼をたくさん述べてぺこぺこしながら去って行く女性に、片手を上げて見送りながら。
白昼堂々路地裏ナンパを見かけ、それもかなり質の悪そうな絡みに感じ取れば、
矢萩 咲は一応最初は口頭で、次にはもう二言目の代わりに拳で、不埒な輩を撃退した後である。
いつもならば斬って捨ててもまだ足りない気分だった気がするのに、どうしてだか、伸びて転がっている男に視線をやった途端、おかしな感情に見舞われていた。
「咲は、こんな弱い人間ではない、筈なのに……っ」
伸した男への慈悲心だとでもいうのか。
それとも、その横顔がほんの少し、彼と似ていたからだろうか。
一瞬、ほんの一瞬、彼が倒れているような錯覚にとらわれて、胸が締め付けられたからだろうか。
『鬼矢萩の目にも涙』
乱暴に両の目を拳で拭ってから、とりあえず警察に報告しておくかと、無理矢理思考を変えようとしながら歩き出すのだった。
◇
「勘弁しろ……まさかコレが共通点じゃねえだろうな……」
身辺警護がてら本日もあっちへ行ったりこっちへ行ったり、ひたすら引っ張り回され歩き回った後。
マンションに到着した途端、
夜海霧 楓は辞書を片っ端から読み漁っていた。
道中、薄っすらと角を生やした人間がチラホラ見かけたのだ。『節分はとっくに終わった、よな?』などと、暫くは首を傾げていたわけだが。
しかして角を生やした人間の周囲で、奇怪な現象が勃発しているのを数件目撃。更には、角が無い人間の中にも何やら感情起伏が激しいやら、動揺している者も目にすればさすがに異変が起きているのだと察したわけで。
「心を鬼にする、くらいならまぁ俺もむしろ日常的なもんだが。
銭ある時は鬼をも使う、鬼を一車に載す……こんな色々あんのか、『鬼』がつく言葉……」
今は外に出なければ影響がないことを祈るのみか、と小声で呟いては億劫そうに辞書を閉じるのだった。
―― アナタノ 内ニ オニハ イマスカ ――
民話とか伝承とか大好物! お世話になっておりますコンニチハ、蒼色クレヨンです☆
『鬼』しばりで作ってみたらどうなるかしら? と好奇心から練ってみたらノリと勢いな中身になりました。
日常の中の、あまり飛びぬけた非日常にならないよう、でもちょっぴり刺激風味に、楽しんで頂ければ幸いです。
御巫 時子様、矢萩 咲様、夜海霧 楓様におかれましては、
ガイドに拝借させて頂き誠にありがとうございました。
本文はあくまでリアクションの雰囲気はこんなふう、といった1例ですので
もしもご参加頂ける際には、本文全て忘れて頂いてお好きにアクションをおかけ下さい。
●『鬼』に関わる奇怪現象発生中!
・角の生えた人間が不思議能力に見舞われる【非日常寄り】
・心の奥底に眠っていた『鬼』が顔をもたげ、普段と違う性格や言動になる【日常寄り】
この二通りの現象な様子。どちらも、数時間~1日で元に戻る。
下記から数字またはアルファベットをお1つ選んで、アクションにお書き下さい。
ちょっぴり異形な非日常寄り
1.鬼八法師:
霜の化身。二本角。自身の周囲や触れたモノに霜がふる。
2.前鬼&後鬼【GAのみ】:
それぞれが一本角、二人で一人な如くお互いの身体がどこか触れていないと身動き出来ない。特に特殊能力なし。
3.赤鬼:
赤い角が1本だったり2本だったり。飛行化。姿が普通の人には見えなくなる。
人で無いモノ、島を彷徨う霊などが視認出来る。言葉交わせるかはその者次第。
4.鬼の姿と能力が見えちゃったヒト:
鬼たち(=元寝子島人)にコンタクト取っても、元に戻そうと奮闘しても、見守り態勢でも、ご自由に☆
普通の人間には基本、角は見えないため特に騒ぎにはなっていない様子。
ただし稀にそれが見える者もいるようだ。
角が生えてしまった当人は、自身の変化に気付く者気付かない者など様々。
ちなみに、桃を食べると途端に元に戻れるとか……。
心のオニに影響される日常寄り
【メタ説明】
プレイヤー様が選んだ『鬼』のつくことわざ・言葉遊びなど、その意味に因んだ影響をキャラクターが受ける形になります。
やりたい事からそれに合いそうなことわざを探したり、逆にことわざを見てからキャラ様に合うかも☆と思いついたり等、アクションの練り方はそれぞれお好きな流れで。
A.鬼の霍乱:
健康が取り柄だったり丈夫な身体が自慢だったのが、ほんのうっかりで倒れたり病気で寝込んだり、
挙句やたらと弱気になって寂しさ倍増。
B.鬼と戯れ言:
仲の良い友人・仲間といつも通りに会話している、はずなのに……
どうしてか今日は『なんで優しくしてくれるんだろう』『何か裏が?』等と疑って気味悪く感じてしまう。
C.その他:鬼がつく慣用句等をご自由に抜粋して、キャラ様らしくアクション練って頂いて可。
(アクションの全体傾向をそのことわざで、なんとなーく判断致しつつちゃんと拝読する流れ)
「キャラクター様の目的蘭」のところにことわざ類を記載頂いても構いません☆
鬼な字が数個入っていれば、ことわざの類が無くともOK!
(ことわざ使用の方が当方への説明省けてアクション文字数節約になるかしら、という当方の思いつきな為←)
【日常寄り】は特に、『鬼しばり』なプチフリーシナリオと捉えて頂いて正解かと(笑)
ことわざ類は、噛み砕いてアレンジしたアクションでも充分OK!
非日常寄り同士、日常寄り同士(その中で更に、シリアス同士やコメディ同士等)でアドリブな絡み描写が入る可能性があります。
(絶対、では無いです、多分、メイビー)
個別で!と希望される方は、アクション冒頭に「×」の記号だけ入れておいて頂けると助かります。
『鬼』の字をこれでもかと書くであろう事を踏まえて、
万が一の為に、執筆直前お参りでもしておこうかしら! などと思案中なビビりな文房具こと、
蒼色クレヨンでした☆