レイン・チョコレート・レイン｜リアクション

レイン・チョコレート・レイン

◆レイン・チョコレート・レイン

「……あ」

　寝子高の屋上であがった叫び声が、途切れる。その声の主であった春名あきらは平静を取り戻すと、額に手をやった。チョコレートは依然として降り続けている。屋上にいた他の生徒も、歓声を上げたり驚いたりと、様々な反応をしていた。

「あかんあかん、取り乱してもーた」

　あきらは額から手を離すとしゃがみこみ、箱の中身を確認する。くんくんと匂いを嗅ぐと、彼女にとっては嗅ぎなれた、快い香りが鼻腔をくすぐった。それゆえに、それが何なのかすぐにわかる。

「チョコやねぇ、これ。それも結構ええチョコの香りがするわ……」

　あきらはこう言って、ぐっとこぶしを握った。

「これは神魂のせいやな！　許せへん！」

　そして両手をパンッと合わせて、パッケージを開ける。

「ありがたくいただきます！」

　あきらはゆるゆるになった顔でチョコレートを味わっていた。今は、ナッツの入ったチョコレートの食べ比べをしている。

　――マカダミアもええけど、アーモンドチョコはもっと好きやなぁ。香ばしい香りとかりっとした食感が……。

　こりこりとしたそれをかみ砕きながら、あきらはこう考えていた。すると、隣にいた生徒があきらの持っているチョコレートを見て、話しかけてくる。あきらはその生徒と二言三言話して、手元のアーモンドチョコを差し出した。礼を言われて、悪い気はしない。それから何か用があるのか、屋上を出て行った生徒の背中にあきらは手を振る。

「またな～」

　その生徒が視界から消えた後、あきらはチョコ三昧を再開した。洋酒の香るトリュフや、口どけのいい生チョコ。それら全てはあきらを楽しませた。先程口に入れたものは、ラム酒入りだろうか。独特の風味が広がる。

「あっまいなぁ！」

　高級なチョコレートに飽きてくると、今度は板チョコに手を伸ばした。あきらは銀紙を剥がして、その一欠けらを食べる。甘くてまったりする味わいのせいか、どこか懐かしい気持ちになった。といっても、あきらはその懐かしい、が指す時代をよく知らない。が、細かいことはいいのである。だってチョコレートが美味しいから――。

「うーん、やっぱ全部は無理やな！　血糖値500くらいになってまうで」

　胸やけのしかけた腹を摩りながら、あきらは笑って食べる手を止める。そんな中、さっと生活習慣病のことを考えては、あかんあかんと首を振った。後は……と、あきらは積もっているチョコレートを見て、一つ一つカバンに入れる。持って帰って後日食べるつもりだった。これから毎日チョコレートを食べられると、あきらは足取り軽く帰宅する。

「な、なんやこれー！」

　その翌日、鏡の前。肌にぽつぽつと出来たニキビに、あきらは叫んだ。

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あとがき

担当マスター：六原紀伊
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六原です。
チョコレートの雨が降るというシンプルなものでしたが、皆様のおかげで、とても充実したリアクションになったと思います。
チョコレート以外の雨も降ったらいいですね。いずれそのネタでガイドを出すかもしれません。

今後の予定ですが、恐れ多いことにテスト勉強シナリオの一部を担当させて頂くことになりました。
ガイドはまだ準備中なのですか、公開された折にはよろしくお願いします。

それでは、ご参加ありがとうございました。

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