【VS.RED(5)】

　その巨大ドラゴンの攻撃は圧倒的でした。
　スターライトを一撃で沈めた巨大ドラゴンは、さらに爪のミサイルを装填、さらには口から超広範囲の火のブレスを吐いて、ギアマスター達を窮地に追い込みます。
「ぐ……少しの間、耐えていたらと思ったんだけど、それが思ったよりも難しそうだね……！」
　炎の熱気にあぶられながら、鈴島 クミさんがさすがに動揺を隠せずに言います。
　スマホをスワイプして、頭部の分析機能をフル活用。
　ST93の高機動をいかし、とにかく相手の攻撃をさけまくります。
「……諦めちゃ駄目だ、クミ。翼を狙うなら、俺が隙をつくるよ……！」
　そう言った陸堂 源次くんの頼もしさときたら、普段ののほほんな彼からは想像もつかないもの。
　実際、パイルバンカーは地面に築かれた塹壕と塹壕の間をローラーダッシュで縫うように駆け巡り、チェインガンを正面から撃ちまくって囮になります。
「おー、ちかの塹壕、役立っとるかー。ほなら、こっちも突撃や！」
　苑下 ちかさんも、その源次くんの動きには、何らかの感化をうけたようでした。
　ちかさんの相棒のオケラタンクは自慢のキャタピラを唸らせながらドラゴンに向かって突進。
「無茶をするね……。援護する」
　その動きを、牧 雪人くんのボナパルト２がサポート。オケラタンクを狙うミサイルをボナパルト２の放った一条のビームが撃ち落としていきます。



「でかなっても、トカゲはトカゲやで！」


　盛った土をジャンプ台にトカゲのどてっ腹にドリルアタックをしようとしたそのとき、
「わーーーーーーーーー！？」
　やはり鋭い尻尾がオケラタンクとボナパルト２を一蹴。スターライトに引き続き、オケラタンク、ボナパルト２も行動不能に陥ってしまいます。
「味方が三体もやられやがりましたか……！」
「……こりゃキリエんシールドだけじゃ難しいそうかなー。んじゃま、ここらが僕の死に場所かなぁ」
「だから、勝手に盾にしやがるなと……スミレ！？」
　キリエ・オーラティオさんがいつものように突っ込もうとした瞬間、若宮 菫さんはちょっとだけ真面目な表情でセラフの後ろから離脱して、ガトリングを連射しながら単機でドラゴンに突っ込んでいきます。
　それに、巨大ドラゴンも応戦。
　塹壕を利用して、かく乱しながら進んでくるユサールB3カスタムをしっかりとトカゲの目で追って、反撃を仕掛けてきます。
「その目の良さが命取りさ。ひゃっはぁああっ！」
　奇声をあげながら、ユサールが突撃。しかし、次の瞬間、爪ミサイルの爆風にあおられて、ユサールも行動不能に。
「スミレ……！？　ぐぬぬ、よくもやりやがったな、なのです……！」
　キリエさんは、仲間をやられた怒りに燃えます。しかし、彼女のセラフは積極的な攻撃に向いていません。
「……また一人やられた。でも、この距離なら……今だよ、クミ！」
　そのとき、源次くんが残ったチェインガンの弾を撃ち尽くしながらクミさんに叫びました。
　その声に反応したのか、その瞬間、ドラゴンが大きな口を開いて、火のブレスを発射！
「……うわああ！？」　
　ついにダイバーもよけきれずに行動不能に陥ります。
「……ゲンジ！？　……っ、ゲンジの気持ち、無駄にしないよ！　行けっ、ガラクタくん、高周波振動式無銘刀！！！」
　裂帛の気合とともに、ST93の必殺の剣がドラゴンの翼を斬り裂きます！
　ドラゴンが悲鳴をあげました。
　翼の動きが悪くなり、ダメージが通ったことが窺えますが、その次の瞬間、ドラゴンの爪がガラクタくんをズバン！
「……っ……やられた……」
　ついにガラクタくんも動かなくなり、残ったのはキリエさんのセラフだけになります。
「……これは……もしかすると……詰みやがりましたかね……？」
　キリエさんの頬を汗がたらり。
　そんな彼女のセラフを巨大ドラゴンの目が睨みます。

『RED』はまだ呆然としています。
「……だから……無理だと言った……バーニングドラゴンの強さは……俺が一番良く知っている……勝てるわけがない……だが……そのせいで……」
『RED』の声が震えています。このまま暴走が止まらなければ、カプギアというアソビがどうなるか、彼にもやっと想像がついたのでしょう。
「……『RED』」
　そんな『RED』を、竜世くんは動かなくなったスターライトを手で包みながら悲しげに見つめていました。
（……くそ、オレは無力だ。皆があんなに頑張ってるのに、もう何もできないなんて……）
「……くそ！　何かできないのか！　なあ、頼むよ。動け、頼むから、もう一度動いてくれよ、スターライトっ……！」
　懇願にも似た竜世くんの叫びが、寝子島神社の澄んだ空の下に響いたときでした。
「……っ！？」



『――――！』


　スターライトの瞳に、再起動のエフェクトが灯りました。
　スターライトのボディーパーツの心臓部にある魂が、竜世くんの魂の叫びに呼応したのかもしれません。
「……そうか、スターライト。お前も、もう一度、戦ってくれるんだな……！」
　きりり、と唇を真一文字に引き結んで、竜世くんは再びスターライトとともに突撃。
　残りＨＰはほぼゼロのままですが、だからこそフレイムチャージによる猛ブーストからの必殺の一撃で起死回生の大逆転を狙います。
「おお……まさか復活しやがったのです……！」
　セラフのバリアで懸命に炎のブレスに耐えていたキリエさんの瞳にも希望の光が戻ります。
　ですが、ドラゴンも負けじと、また爪ミサイルを連射。さらに尻尾や爪の連撃をスターライトにくわえようとしますが、
「でかいっつーことは動きもでっけーってことだろ！　飛ぶなら羽が、爪ならうでが、ブレスなら口が動くはずだ！」
　最後の集中力を振り絞り、竜世くんがドラゴンの攻撃を超回避！
　ちょうど大口を開けたところに、猛ダッシュで口の中に突っ込み、メテオキャノンを撃ち込もうとします――が。
　そこで、ぷすんとブースターが燃料切れ。
「嘘だろ……！？」
　目を見開く竜世くん。
　そんな彼のスターライトを冷たく笑ったバーニングドラゴンの炎が狙います。
　そのときでした。
「……失礼ですが、誰か忘れてませんか、なのです」
　そのとき猫屋敷 姫さんの声が響くと同時に、バーニングドラゴンがビクンと動いて、その動きを止めました。
　そう。さっきドラゴンが大口を開いたとき、ろっこんで小さくしたナデシコがドラゴンの体内に潜入。
　獅子身中の虫として、ここぞというときの一撃を加える瞬間を虎視眈々と待っていたのでした。
「最後のチャンスなのです！　セラフのバフ効果、全部もってきやがれです！」
　キリエさんが叫び、セラフの腕パーツによる攻撃上昇効果をスターライトにもたらします。
「……サンキューな！　キリエ！　姫さん！　スターライト、これで決めろぉおおおおおおおおおおおおお！！！」
　次の瞬間、スターライトナイトの攻撃力を引き上げたメテオキャノンが巨大ドラゴンに直撃。
　刹那、巨大なドラゴンは大音量の悲鳴をエフェクトを響かせて、空に向かって咆哮し――、

「……そう、か。これがお前達の言う、本当の『強さ』か……」

　ぽつり、とついに敗北を認めた『RED』の呟きが響くとともに、バーニングドラゴンは元の大きさに戻り、そのままコテンと地面に転がって動かなくなったのでした。

【終了会話】

RED「……見せてもらったぞ。お前達の強さ」
菫「んふふ。そうさー。伊達にプレイ時間と投入金額の桁が違うわけじゃないのさ」
キリエ「スミレ、台無しですから、お前はちょっと黙ってやがれなのです」
ちか「まったくこのどあほが。ちゃんと神さんにあやまってき。どろ、つまっとったら、次、大変なことなるからオイルで関節とか、よーあらうんやで？」
RED「ああ、そうしよう。こいつは俺の大事な相棒だからな」
姫「（……暴走と神魂の関係は気になるですが）ひとまず一件落着なのです？」
クミ「もうツールとか使ったら駄目だよ？　『RED』くん、そのままでも充分強いんだからさ。ね、ゲンジ？」
源次「そうだね、クミ。また今度は暴走抜きで戦いたいな」
竜世「そうさ、またギアバトルしようぜ、『RED』！　同じカプギアを愛する者同士、今度こそ正々堂々とな！」

【MISSION COMPLETE!】