【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！｜リアクション

【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！

☆テンション上がってキタ！

「休暇を兼ねて潮干狩りでもしてみるか」
　新田亮はバケツに熊手、長靴に麦わら帽子という装備で潮干狩りに臨んだ。
　人見知りで生真面目な亮は、貝の説明を聞いた後は一人で黙々と熊手で砂を掘り、出てきた獲物をバケツに詰める。
「大量大量。この場所は当たりのようだな」
　少し暑くなってきた亮は、軍手をはずし汗をぬぐった。
「よし、どんどん掘るか」
　軍手をポケットに突っ込んだとき、砂からぬっと『ぬぎエビ』が現れた。
「危なっ！」
　驚いた拍子にバランスを崩して尻餅をつく。
「危なかった……ん？」
　手の先に何か感触を感じた。
　おそるおそる見れば、手の先には何と『マジハワイ』が。
「あ……しまったテンションが……上がって(ﾟ∀ﾟ)ｷﾀー!!」
　亮は落ち着きを失い、マジハワイを掴んだまま砂浜を駆け出した。

「ふぅ……日差しはキツくないけどやっぱり乾くな……補給水持ってきて良かった」
「何、それ？」
　何かの瓶を取り出し飲んでいるヒューマに、アリスが尋ねる。
「良かったら一ついるかい？　各階の果物や蜜を混ぜて体に吸収しやすくした飲み物だよ。僕は他の種族より渇きに弱いからね。採取の時は持ってくんだ」
　そう言ってたくさんの瓶を取り出す。
「ありがとう、いただきまーす」
　アリスは一本もらって飲みほした。
「おいしい！　喉が渇いてたから助かったー」
　元気になったアリスは、張り切って潮干狩りを再開する。　
「朝貝やマタ貝、浜栗を沢山とるね」
　熊手を使って砂を掘っていたアリスは、飛び出してきたぬぎエビに触れてしまった。
（あれ……なんだか脱ぎたい？）
　すぐに衝動を抑えきれなくなる。
「服が邪魔！　裸で海に入りたくなっちゃうね」
　パーカーを脱ぎ捨て、次に水着を脱ごうとする。
「アリスさん～、脱ぐのはやめといたほうがいいよぉ」
　さすがに驚いたらしくピエロットは言うが。
「ワカメを巻いたら大丈夫！」
　そう言うアリスに、慌ててヒューマがワカメを持ってくる。
「ワカメは邪魔にならないのかな」
　そこは謎であるが、アリスは脱ぎながらワカメを巻くという妙なことを始めた。
　視力のいい月がそれを見つけて飛んできた。
「エッチなことはいけないと思います」
　ちょっと顔を赤らめて、落ちていたパーカーを広げてアリスの肌を人目から守る。
　見えそうで見えない光景は、ある意味見せるより刺激的だった。

　そこへ亮が走ってきた。
「ようピエロット、折角のオフなんだ。もっと弾けようぜ！」
　亮はマジハワイをピエロットに押し付けようとする。
「何持ってるの～？」
　ワカメをまとったアリスがそれをつかんでしまった。
「まずは水泳勝負からだ。あの浅瀬にある岩場と砂浜を２０往復しようぜ！」
「……ぐー」
　無茶振りをする亮に、ピエロットはいびきで答えた。
「えー？　あははは！　なんだかおかしくなっちゃった。笑っちゃうよ」
　アリスが笑い出す。
「起きろ！」
「ぼく、眠くって……泳いでると途中で寝ちゃうから」　
　ピエロットは目を閉じたまま断った。
「ピエロットって面白いね。あっ、貝が動いてるよ！」
　何でも面白くなっているアリスはコロコロと笑うが、いつもとあまり変わらないかもしれない。
「へー、マジハワイは触ると笑いだしちゃうのか……麻痺の一種なのかそれとも毒か……上手くあれと組み合わせたら……いや、あの花粉と合わせた方が効果的か」
　新しい素材に楽しくなりすぎて、ニヤニヤして考えをつぶやいているヒューマは不気味にも見えて、亮が聞く。
「あんたもマジハワイ触ったのか？」
「……え？　いや僕は触ってないよ？　グローブ着けてるしね。あ、興奮状態で泳ぐのはやめたほうがいいよ、ピエロットじゃなくても効果が切れたときに溺れかねないからね」
　ヒューマは冷静に亮を止めるが。
「俺は鍛えてるから溺れたりしない！」
　胸を張る亮は、マジハワイを持ったまま海に飛び込み泳ぎだした。

　その時、急に大きな波が押し寄せてきた。