【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！｜リアクション

【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！

☆間歇波のいたずら

　波打ち際で潮干狩りを楽しんでいた桜は、アナジャコみたいな生き物を捕まえた。
「あれ……？　なんか気分がハイになっていく感じがする」
　それはマジハワイだった。笑みを浮かべながら、ますます快調に砂を掘る桜。
「ん……今度はエビ？」
　ハイなテンションのまま、ぬぎエビの効果が加わり。
「なんかもう、こんな布切れいらなくなっちゃった！」
　気分は最高にハイ！　
　桜はためらうことなく、まずは水着の上を豪快に脱ぎ捨てる。
　男性の視線が集まる……と同時に。
　音速の速さで月が駆けつけた。
「エッチなことはいけないと思います！」
　月は手にしたワカメを桜の胸に巻きつける。
「えー、脱ぎたい！」
「だめです」
　抵抗する桜を、月はワカメでぐるぐる巻きにしてしまった。
「これで脱げないでしょう」
「ふふ、でもこれも面白いー」
　マジハワイの影響でハイになっている桜は、ぐるぐる巻きになっても楽しんでいた。
「……ハッ！」
　桜に気をとられていた月は、背後から急に押し寄せた波に気づくのが遅れた。
　桜と共に月は、波の直撃を受け翻弄される。
「……！」
「きゃー！」
　幸い一瞬で波は引いていったが。
　波打ち際に残された桜のワカメが半分はずれ、まるで生き物のように月に巻きついてしまっていた。
「解けません……不覚です」
　月は腕を動かすが、どうこんがらかったのかワカメは解けない。
　海水に濡れたワカメは二人をしっかり結びつけ、桜の胸が当たっていることに気づいて月は顔を赤らめる。
「面白い～、どうなってるの？」
　二人で縛られたまま、まだ桜は笑っていた。　
　
「わ、すごい波！！」
　夢中で潮干狩り競争をしていたメリィは、間歇波に気づいて飛びのいた。
　その波頭から、何か飛び出してきた。
「お？　なんか美味しそうで強そうなやつが……」
　それは目つきの悪い魚だった。
「シャーッ！」
　口を開けてギザギザな歯を見せ威嚇してくる。
　メリィはひるむどころか二度目のよだれを垂らして。
「これは食べられるよね。えへへ……えへへへ……」
　次の瞬間、緩んだメリィの顔が本気になる。
「ひっさぁーつ！　トラパーンチッ！！」
　パンチを受けた魚は目を回して砂浜に落ちた。
「ゲーット！」
　満足げにそれを捕らえるメリィ。
「メリィちゃん、すごいです！　これサメですよ！」
　リリエルも大喜びだ。
「はー、お腹空いてきた……よしっ。もっと取ろ！！」
「はい！」
　二人はさらに張り切るのだった。

　修は波が引いた後の浜に、不思議なものを見つけた。
「ピエロット、これは何だ？」
　それはコンブに似た大型の海草だが、透明だった。
　ピエロットは首をこてりと傾げて。
「なんだっけー？　たしか、海硝子かな。沖から流されてきたんだねぇ」
　と答える。
「なるほど、ガラスのように見えるな」
　触れてみると海草と同じ感触だった。
「これは珍しい」
　ヒューマの顔が好奇心に緩む。
「食べられるですか？」
　美咲紀も触りながら目を輝かす。
「んーとねー。食べられるんじゃないかなあ」
　ピエロットの返事ははっきりしない。
「珍しいものだというし、いきなり食べるのも危険だから研究してからにしよう。他にも食べるものはたくさんあるしな」　　
　そう言いながら修は思う。
（知らない事があるのは素晴らしい！）
　

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