【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！｜リアクション

【星幽塔】第九階層　ひと狩り、潮干狩り！

☆教えてピエロット！

「水着になって泳ぐぞー」
　水着の上にパーカーを着た水色の髪のアリス・ミーティアは、海に向かって走りかけた。
　しかし潮干狩りをする人たちを見て本来の目的を思い出し、回れ右する。
「じゃなかった、潮干狩り頑張るよ！」
　たぶん泳ぐにはまだ少し水は冷たいだろう。
　くまでやバケツを借りて取れる場所も教えてもらって。
「ピエロットはまた寝てるの？」
　アリスは、日陰のビーチチェアに寝そべるピエロット・アリスに近づいた。
「ピエロット！　潮干狩りしよ！」
　引き込まれるような満面の笑顔で言った。
「んー、ねむい……」
　常に眠たいおひつじ座のアステリズムがぼやく。
「楽しまなきゃ損じゃない。それにかいぶつ出るって言って寝てるのはダメでしょ」
　腕を引っ張られて起こされたピエロットは、眠い目をこすりながらアリスに連行されるのだった。

「あーいいなぁ海って……海育ちではないんだけど感覚的にいいと思うんだよね」
　ターコイズブルーの髪が目を引く薬師、ヒューマ・ノ・スキッドがウキウキとつぶやいた。
　透けるような白い肌は砂浜には似つかわしくなく見えるかもしれないが。
「祖先の記憶なのかな？」
　ほしびとであるヒューマはイカの特徴が入った人型で、身体の8割が水分でできている。
　食事をある程度しなくても水分があれば平気なくらいだ。
　もっとも塩辛いものは苦手なのだが。
　ヒューマはライムグリーンの瞳を砂浜に向ける。
　彼の仕事は薬になりそうな材料を探しては調合して開発することだ。
「こーやって素材を採取できるのは楽しいな。さて、とりあえず狙うのは薬の材料になる貝なんだけど……地面から浅い部分にいる貝は素足で歩けば感覚で分かるんだけど深い所のがな……」
　そこへピエロットとアリスが通り掛かった。
「ヒューマ、こんにちは。相変わらず難しい研究してるの？」
　アリスが声をかける。ヒューマはアリスが働く酒場『Ｂａｒアストラル』のお客なのだ。
「こんにちは……え？　難しくないよ。楽しいよ？」
　難しいと言われ、ヒューマは心外そうだ。
　さらにパーカーを着た八神修もやってきて、ピエロットに声をかける。
「ピエロット、ちょうど良かった。浜の生物のことを教えてほしい」
　ヒューマが足で掘り出した貝を見ながら、なんだかんだ言ってもお人よしなピエロットが説明する。
「んーとね、これが朝貝でこっちが浜栗だよぉ。浜栗は飲みすぎの薬の材料になって……」
　一通り説明するのを、修は知的好奇心あふれる眼差しで聞いていた。
　なにせ初めて見る生物だ。
「本当は専門施設で研究した方が世の中の役に立つ。だがこの塔の存在は秘密……残念だよ」
「薬の材料にすれば十分世の中の役に立つよ」
　ヒューマが言う。
「そうだな。浜栗や朝貝は熊手のような器具で獲るのかな」
　道具を借りてきた修は、どんどん色々な生物を探し始めた。

　白いロングヘアに赤い瞳の旅鴉月詠も、説明を聞いて行動を起こす。
　月詠が手にしたのは熊手ではなくトングだ。
「直に触らなければどうという事はない、はずだ」
　浜辺に打ち上げられたかいぶつや魚をトングで捕まえポイポイとバケツに入れていく。
「あまりに小さいものは海に帰してやるのはマナーだ」
　見ていた修も言った。
「そうだな。獲り尽くさないよう、小さい物は放流しないとな」
　バケツをいっぱいにした月詠は立ち上がった。
「皆が獲ってきたものを調理するから、持ってきてくれ」
　そう言ってスケッチブックを開いてみせる。
「これは期待できるな」
　スケッチブックに封じられたものを見た修は頷くのだった。　
　

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