もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！｜リアクション

もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！

　サバトラの子猫――ウィルを猫キャリーに入れて、来島アカリは外へと出た。
　ウィルを定期健診に連れて行くつもり……だったのだが、
「むー……なんか、みょーに人が少ないような……？」
　という具合で、人気のない街は、何だかやけに寒々しい。
　アカリはウィルを連れたまま、少し歩いてみることにした。
　結局、一度も誰かとすれ違うことのないまま、アカリは寝子ヶ浜海岸へと辿り着く。
　不可思議な状況だが、波音が、吹く風が、何とも言えず心地良かった。
「なんか変な感じだけど……ウィルに海を見せてやれるな。って、うん？」
　遠くに、黒い、大きな影を見留めて、アカリは双眸を瞬かせる。
「……あれって」
　気付いた時には、アカリはもう、砂を蹴って走っていた。
　影が、近づいてくる。ああ、やっぱり、間違いない！

「……ライ、ライだよな……？」
　胸に湧く喜びのままにアカリは翼獣ライへと抱きつかんとして――、
　――どしーん！
　腹に、思いっ切り頭突きを食らう羽目になった。
「うぐっ！　……もー、変わんねーんだから」
　アタックされた腹を撫でながらも、小さく目元を和らげるアカリ。
　それがライなりの愛情表現だと、アカリはよく知っているのだ。
「……久しぶり、ライ。元気そうで良かったよ」
　くるる、と、ライが満足げに喉を鳴らした、その時。
「……ウィル？」
　猫キャリーの中のウィルが、突然、賑やかに鳴き出した。
「どうしたんだよ、ウィル……出せって？」
　みゃあ、とのお答えを受けて、
「んー……大丈夫そーだし、まーいっか」
　と、アカリはウィルを猫キャリーから出してやる。
　するり、とび出してきたウィルは、ライと、鼻を合わせてくんくんと挨拶をした。そして、
　――くくる。
　――みゃあ、みゃあ。
　――くるる、ぐう？
　――みゃ！
　――くるるる！
　何だかよくわからないけれど、１匹と１頭はすっかり意気投合した様子。
「……何喋ってんだ、お前ら」
　なんて首を傾げるアカリを余所に、ウィルがライの背中へとひょいととび乗る。
　４つの目が、アカリに、ライの背中に乗るようにと揃って促した。
「……乗れって？」
　ウィルとライが、一緒になって頷く。
　アカリは、はあ、と疲れたように息を吐いた。
「もー、なんで二人（？）で話進めてんだよ……てゆーかなんで意思疎通してんだよ」
　別にいいけど……とアカリがライの背に跨れば、
「わわっ！？」
　と、途端にライがぶわりと飛翔する。
「もー！　飛ぶならそう言えっつーの！」
　慌ててライの首にしがみ付きながら文句を零すアカリ。
　けれど、ライのどこか楽しげな様子に気付けば、思わずこちらも口元が緩んだ。
「……ここが俺たちの住んでる場所だよ、ライ」
　――ライのとこより自然は少ないかもしれないけど……いい所だろ？
　くるる、と、アカリの言葉にライが応じる。
　やがて、九夜山の柔らかな草の上へと降り立てば、
「うわっ！？」
　油断していたアカリへと、ウィルとライが、揃ってどーん！　と体当たり。
「も、もー！　やめろっつーの！」
　さわさわと優しく心地の良い風が、声を上げるアカリの髪をさらりと揺らす。
　ふわ、と、アカリ達は揃って欠伸をして――アカリはそれが可笑しくて、少し笑った。
　ウィルとライも、顔を見合わせ、楽しそうにしている。
　じきに草の上にぺたりと伏せたライへと、アカリは背中から、もふっともたれかかった。
　そんなアカリの太ももの上では、ウィルがちょこんと丸くなっている。
「あったかいな……」
　なんて言っているうちに、１人と１匹と１頭は、揃って幸せな夢の中。

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