セピア幻想異聞録：No.1「妖精ピクシー」｜リアクション

セピア幻想異聞録：No.1「妖精ピクシー」

◆　真実は

『ユウヤとイナリの言うとおり。私たちは、そこの本から出てきたの』
　藍のピクシー、サティが言った。
『ここの食べものをもらってたのは、今、皆に食べてもらっている魔法のキャンディを作るため』
　橙のピクシー、サニーが続いた。
『気をつけて！』
『そのキャンディ、食べ終えてしまったら』
『私たちの言葉、わからなくなってしまうから』
　そう忠告をしたのは、赤のマーズ、黄のルナ、青のマキリである。
「このキャンディを作るために、お店のものをもらってたってことは……ピクシーさんたちは、皆とお話がしたかったのです？」
『そうね。そうよ』
　美咲紀の問いに、緑のピクシーであるユピテルがうなずいた。
『正確にいうなら、お礼を言いたかった――かしら』
「お礼？」
　不思議そうに、いいなは首をかしげる。すると、その肩に降り立った紫のピクシー、ビナが言った。

『うん、お礼。私たち、ユウヤの代わりに、寝子島の皆に、お礼が言いたかった』

　いわく。この島に来てからの悠弥は、とても、たのしそうなのだと。店が賑わうようになってからは、ますます、たのしそうなのだと。
『ユウヤとイナリ、私たちの本、とても大切にしてくれる！』
『ほかの本も、大事にしてくれる！』
『私たちに名前もくれた、大切なトモダチ！』
　マーズが、ルナが、マキリが、口々に言う。
『そんなトモダチが大切にしている人たちなら、私たちにとっても、トモダチだわ』
　ユピテルが、おだやかに微笑んだ。だからこそ、お礼を伝えたかったのだと――
『時間は、もうそれほど残っていないけれど、私たちも、あなたたちをもてなしたい』
　と、サニーがテーブルの中央に降りた。続いて、サティも。

『あなたたちが、私たちにたくさんの甘いものを作ってくれて、遊んでくれたみたいに！』

　　※

　その後の『セピア』では、七色の羽根をもったピクシーたちをまじえて、小さなお茶会が開かれた。
　写真ではとらえることのできなかった彼女たちの存在や、ともに過ごした思い出を証明する手段はない。けれど、修、桐子、葉月の手によって描かれたお茶会のようすは、後日、その場に居合わせた面々に、コピーして配られた。
　そして、お茶会の終わりとともに姿を消した、七色のピクシーたち。その住処である本の、あるページには、不思議なことにも、自らの似顔絵を抱えたり、甘いものを頬ばったりする幸せそうなピクシーたちの姿が、挿し絵として載っていたという。

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あとがき

担当マスター：かたこと
ファンレターはマスターページから！

この度は、喫茶「セピア」へのご来店、まことにありがとうございました。
臨時休業の中、ピクシーたちと過ごしたひとときは、いかがでしたでしょうか。
ピクシーたちの『いざないの先。もてなし、忍び寄っては、たわむれて、導きだされる真実は』このシナリオに参加した方々のみぞ知る。
このリアクションが、皆々さまのお口に合いますことを、願って。

それでは、また、お会いする日まで。

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