寝子高のとある（非）日常｜リアクション

寝子高のとある（非）日常

●きらきら！　２人の学生生活！（１）

　リリエル・エーテライトとメリィ・ランページは、いつものように校門前で待ち合わせた。
　……と、いうふうに周りからは見えただろう。
　けれど２人は、本日一日限りの寝子高生なのだ。
「はわわ！　メリィちゃん、私たち、学生さんになってます！　……はっ！」
「リリエル？　どうしたの？」
「め、メリィちゃん……制服姿、とっても可愛いです！」
「……へ？　あ、この服、セーフクっていうの？　うん、なんか、かわいいよね！」
「メリィちゃんが着たら可愛さ倍増……いえ、もっと、もーっとですよ♪」
　制服のスカートの裾をふわんと揺らして、瞳をきらきら、力説するリリエル。
　親友の言葉に、メリィは「えっへへー！」と輝くような笑みを零した。
「ありがと、リリエル！　リリエルも可愛いよーっ！！」
　校門前できゃっきゃとはしゃぐ２人のほしびと女子。
　神魂に導かれるまま寝子高前までやってきたけれど、２人揃えば、胸いっぱいのわくわくが溢れ出す！
「いつもと違う服って、なんか新鮮な気分！　見て、ひらひら～」
　実はあたし『学生』に憧れてたんだよね～、と、メリィの双眸は期待にぴかぴか。
　と、その時である。
　校舎の方から、チャイムの音が厳かに響き始めた。
「ん？　何だろ？　鐘の音？」
「め、メリィちゃん！　何だか私、急いで教室に行かなくっちゃって気がします！」
「あっ、あたしもあたしも！　学生って、結構忙しいんだね。じゃあ、行こっか！」
「はい！」
「「１年１組へ！！」」
　２人の声が揃う。リリエルの手を引いて、メリィは学校の敷地内へと駆け出した。
「よーし、憧れの高校生だー！！」
　声が弾む。行き先は、不思議と足が知っている。
　そうして、２人の学生生活が幕を開けた――！

　１年１組の担任、白沢絢子先生はホームルームに少しだけ遅れて教室に入ってきた。
「えへへ、ギリギリセーフだね、リリエル！」
　声を潜めて、けれどどこまでも明るい声音で、メリィは隣の席のリリエルへと声をかける。
　ホームルームを恙無く終えれば、さあ、授業の始まりはもうすぐだ。
「そういえば、１限目って何の授業でしょう？」
「楽しいのだといいな～」
　メリィが足をぶらぶらぱたぱたさせる横で、リリエルは時間割表を荷物から取り出した。
「ふむふむ……」
「リリエル、なんて書いてあった？」
「１限目は、英語の授業みたいです」
「えい、ご……？」
　英語、という言葉を聞いた途端、メリィのかんばせに、思いっ切り苦ーい色が乗る。
「メリィちゃん？　顔色が悪いですけど大丈夫ですか？」
「えいご……えいごーー？　えーー……」
　呻くように呟きながら、ぺたり、机に頬を付けてしまうメリィ。
「わ、わ！　メリィちゃんしっかり！　傷は浅いですよ！」
「でもリリエル、英語だよ？　よくわかんないし、何喋ってるのかもわかんないから苦手～……」
「なるほど、英語はよくわからないから苦手……でも、大丈夫です、メリィちゃん！」
　任せてください！　とリリエルが胸を張る。
　メリィが、「リリエル？」と、少し顔を上げて瞳を瞬かせた。
「メリィちゃんとは隣の席ですから、私がサポートしてみせます！」
　リリエルがぐっと拳を握れば、曇っていたメリィの表情が、ぱあと華やぐ。
「やった！　リリエル、頼りになるぅー！」
　チャイムが鳴ったのは、メリィが跳ねるようにして身を起こした時だった。