素敵な１枚はきっとどこかに｜リアクション

素敵な１枚はきっとどこかに

●その一瞬のために

　春賀幽にとってカメラは身近な道具だ。新聞部員として日頃から記事の写真を撮影したり、美術部員として撮影をしている。今日もどこかで新しい何かの一瞬を求めて出かける。いつでも撮影できるようにカメラを首からさげて腰のあたりで構えている。

（不思議な記事になる１枚。普段と変わらない１枚。今の季節、暖かい深緑や街のスポットとか賑わい、盛り上がってきますからねぇ）
（美術の絵画の題材になるいい感じの１枚も撮影して、写真を元に絵画を描いてみようかな）
（最近のカメラは色々できるから可能性が広がりますねぇ）

　かつてのカメラといえば写真を撮るものだったが、いまどきのカメラは動画を撮れる機能が備わっているものも多くなっている。幽はそれを活用する方法を考える。いつもと変わらない日常、でも何処かいつもと違うその一瞬。それを動画におさめて記事にしたり。ニュースのように配信したり。アイディアがどんどん溢れてくる。
　そんなことを考えながら歩いていると、仲間の部員とばったり遭遇した。軽い挨拶をかわしつつ、ちょうどいいタイミングなので今頭のなかに浮かんでいることを話す。新聞部で記事と同時に動画をアップする案を伝えるとなかなか好印象。動画だからこそ伝わるものもきっとあるはず。さらに話を広げて色々な道を考えていく。幽は記事の手帳とペンと手に取りながら新聞の新しい形を提案してみる。ちょっとしたインタビューのようだ。

『今日も良い絵がとれるかなぁ』
『新聞のネタもそうですが、常に自分は情報を求めて歩き続けてますね。美術の背景も含めて』
『不思議な体験だけに限りません、普通な記事も上げてますよぉ』

　写真や動画はありのままの事実を写し残すもの。
　そのとき起きた一瞬を伝える手段ですから、と語る幽。

「写真は毎回同じ絵とは限らないですよねぇ」

　そこが写真の面白いところであり、魅力的なところなのだと。
　だからこそ幽は今日もカメラを片手に外を駆け巡る。