仁義なき焼肉バトル｜リアクション

仁義なき焼肉バトル

『焼肉牛猫』寝子島店は、キャットロードにて今日も絶賛営業中。それはいつも通り、当たり前の――『フツウ』のことだ。
　しかし、道行く人々は、「焼肉いいなー、でも服に匂いつくとなー」とかそんな感じの顔で通り過ぎていく人々は知らない。
　今まさに、寝子島の命運をかけた仁義なき焼肉バトル、情け無用のフードファイト、あるいは最後の晩餐が、幕を開けようとしていることを。
　ここ、『焼肉牛猫』寝子島店はこれより寝子島のメギドの丘であり、これより始まるのは焼肉戦士たちによる最終戦争である――！

　一枚の網をぐるっと囲むようにして、並び立つ焼肉戦士たち。
　彼らの眼前では、網の下の木炭が赤々と燃えている。これから投入される、未来を決する百枚の肉を待ちわびるかのように。
　最初の一枚が投入されるのを待ちながら、八神修は先程から抱いていた疑問を「あいつら」へと投げかけた。
「一つ聞きたいことがある。……焼肉島って、何なんだ？」
　立ち上る熱気が陽炎となり、そのせいか「あいつら」の表情は悪魔めいて歪んで見えた。
　「あいつら」の一人、陸上選手のようなランニングシャツ＆短パン姿の男――カール・ルイビが真っ先に口を開く。
「それは勿論、焼肉が全ての夢のような世界さ！」
　次いで、「あいつら」の二人目、ヤッキー・チェンが言う。
「野菜だの米だの麺だの、惰弱な食物は全て消え失せた、肉のみの至高の世界……。そこで人々は肉を焼き、肉を食べ、そして死んでいくのだ」
　思いのほか、フツウだった。食べ物が肉だけになって、ものすごく油っこそうなことを除けば。それでもお肉大好きな人なら、アリと思えるかもしれない。
　だが、と修が問いかける。
「肉を焼けない、食べられない人はどうなる？」
　「あいつら」最後の一人、のんのん・のんこが天使のような笑顔で告げる。
「お腹ぺこぺこで死んじゃうかもね～。でも仕方ないよね！　だって、焼肉島なんだよ？」
　そう、それこそが焼肉島の残酷な真実！
　ただ肉を食う世界ではなく、肉しか食えない世界！　すなわち、体質的にキツかったり、色々な理由で肉を食べられない者は、餓死あるのみ！
　そんな焼肉のディストピア、それこそが焼肉島なのだ！

　そして今、肉の投入を告げるブザーが鳴り響く。
　戦いの火蓋が、切って落とされた！

このページにイラストを設定する