水守 流は、箸を手に震えていた。
「お、俺が育てていたカルビが……ない!?」
ここはキャットロードの近くにある焼肉屋、『焼肉牛猫』の寝子島店。(
セカンドマップのIー9)
ゆっくり焼肉を堪能しようと1人でこっそりやってきた流だが、ちょっと目を逸らした隙にカルビがなくなっていた。
振り向くとそこには、お口の中がもぐもぐいってる乙女、
本居 陽毬の姿。
おいしそうにカルビの可能性が非常に高い何かをごっくんすると、キラキラと輝いて嬉しそうにしている。
「本居、まさか俺のカルビを食べたのか……?」
「うーん、どうだったかな? ちょうどいい焼き加減の何かが口に入った気はするけど~」
ガターン!
流がイスを倒して立ち上がる。
友人でもある陽毬に怒ったのか? いや、そうではない。
周囲の異様な空気に、ようやく気がついたようだ。
そして、陽毬もその空気に乗せられていたことを、ようやく自覚する。
「ここは、もしかして……?」
そう、ここは神魂の影響によって生み出された、仁義なき焼肉バトルの会場である。
何かに魂を乗っ取られたかのように、店員が事務的に説明をはじめる。
勝負はカンタン。焼肉をより多く食べた者の勝利。
ただ、これは大食い大会ではない。焼かれる肉はわずか100枚。
ブザーが鳴るたびに1枚ずつ網の上に現れ、適度な焼き加減になった時点で取ることができる。
ルールは無用。何をしてもいい無法地帯である。
これだけなら、ちょっと野蛮な遊びというだけで、流や陽毬が警戒する程のこともない。
問題は、ここからだ。
先程から、イライラした様子で佇む灰色猫が頭に話しかけてくる。
『あいつらに負けると、寝子島が焼肉島になっちまうぜ……』
「焼肉島」ってなんだろうとは思うものの、とにかくフツウじゃないことは間違いない。
フツウを死守するためにも、その「あいつら」にだけは負けてはいけない!
『これがお前らの最後の晩餐とならないように、頼んだぜ……』
こんにちは。風雅宿です。
水守 流さま、本居 陽毬さま、ご登場ありがとうございます。
最後の晩餐にならないように、ぜひがんばってください。
◇
というわけで、神魂の影響による焼き肉屋っぽい特殊空間を舞台に、
寝子島の未来を賭けた仁義なきバトルを、なんとか切り抜けてください。
殴ってよし、騙してよし、ろっこん使ってよし、
普段持ち歩いてるわけがないような武器も使ってよし、
なんでもオーケーの仁義なき焼肉バトルです。
(武器は検索して一発で出るレベルの有名なものまでにしてください)
言っておきますが、失敗したら本当に寝子島は「焼肉島」になります。
運営のエライ人がうっかりオーケーしてるので、心してかかってください。
といっても、基本コメディです。首チョンパされても、次のページではつながります。
◇
お肉はだいたいカルビです。
たまにタン塩、レバー、鶏皮が現れます。
肉をひっくり返したりするのは、どなたでもどうぞ。
自分の箸で行ってしまって構いません。箸から菌が移らない特殊空間です。
ずっと肉を箸で挟んでいるのはダメです。
焼き加減が完璧になった瞬間だけ、とってください。
完璧具合は人それぞれ……と思ったら大間違い。
ここではみんなが不思議と同じ「一瞬」を共有します。
焼き肉屋にありそうなものはなんでもあります。
寝子島が終わってしまうのでオススメはしませんが、宴会に興じてもOK!
◇
本文中にあった、負けてはいけない敵「あいつら」について紹介します。
以下の3名です。
・超スピードで肉をかっさらう! 焼肉スピード王ことカール・ルイビ
・酒とおっぱいが大好きなカンフーの使い手! 焼肉仙人ことヤッキー・チェン
・弾ける笑顔で味方に洗脳する精神能力者! 焼肉天使ことのんのん・のんこ
この3名に負けると、明日から焼肉島です。
気をつけてください~。
焼肉もぐもぐしながらお待ちしてます。