＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編

「これか！？」
「ありがとう、御剣くん……」

　一瞬。目には見えない速度で刀は空中を階段のように降りていく。その手には、埃と潮にまみれた猫の像があった。夏朝に手渡された猫の像を、まほろが覗き込む。

「すごく汚れてる……落ちるかな……」

　長く放置されていたのであろう。その像は本当に布袋猫像なのか判別がつかない程汚れていた。綾花と刀はタオルと布を取り出して、その像を丁寧に拭き始める。

「地道に取るしかないかな……？」
「とにかくやってみよう」

　こびりついた汚れはちょっとやそっとでは落ちないようだ。刀はやがてごしごしと拭き始める。綾花もそれに倣うが、その途中、心配そうに猫の像へ語りかけた。

「布袋猫さん、身体の方は大丈夫ですか？　痛んだりしませんか？」

――心配せんでいい！　一思いにやってくれ～！

　返ってきたのは、変わらず朗らかなものである。刀は腕に力を込めた。

「いくぞ！」

　それから数分後。水で清められ現れたのは、朗らかに笑っているでぶっとした猫の像だった。背中には、大きな袋を背負っている。

――ふぅ。さっぱりしたわい。

　どこかサンタ猫たちと似たものを感じるその姿に、夏朝は微笑んだ。像を撫でつつ、口を開く。

「布袋猫さん……可愛い……！」

　その横で綾花も布袋猫の姿に癒されつつ、思い出したように疑問を口にした。

「そういえば、なんでクリスマス……だったんですか？」

――なんでといってものう……サンタというもんがわしに似とると思ったからかのう……。

　綾花の問いかけに、布袋猫は困ったように答えている。それに続いて、修が口を開いた。

「布袋様も大きな袋を持ってて、その中から物を与える存在だからかな。なるほど」

――うむ。それに今じゃそっちの方がめじゃあなんじゃろ？　見つかりやすいと思うてのう！

「それじゃ……袋繋がり……？」

　今度はまほろが、こてんと首を傾げる。その隣で、サキリが苦笑しながら言った。

「サンタはクリスマスにした方が楽しいと思うよ」

――そういうもんかの。

「そういうものだな」

――そういうもんか。
　刀にもそう言われ、布袋猫は納得したように呟く。そんな中、夏朝が口を開いた。

「布袋猫様、これから布袋猫様を祀るお社を建てようと思うんだけど、いいかな……？」

――おお……それは本当か！？　見つかるだけでも御の字と思っとったんじゃがの！　良いぞ良いぞ～！

　その言葉に、布袋が明るい声を響かせる。すると、途端周囲もどことなく明るくなった。
　にゃおおん、みゃううう。
　するとどうだろう、先程まで二足歩行でサンタをやっていた猫たちが、四足歩行へ戻り出す。引き摺っていたはずの大きな袋は何処かへ消え、中にはケープをもぞもぞと脱ぎ始める猫もいた。

「異変の方も解決、みたいですね……！」
「はぁ、かわいかったわぁ」

　猫はさあっとどこかへ、または飼い主のもとへと歩いて行く。日常に戻る猫たちを、あきらとミルカがしみじみと見送った。

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