＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編

「そうねー……すごく汚れた置物が、ここの……どこかにあったと思うけど」
「どこにあったか、詳しく覚えてないかな」

　修が飼い猫と戯れていたその時。サキリはアウトレットに来ていた客――とくに主婦の皆様――から、話を聞いていた。声をかけられた主婦は困ったようにしばらく考え込んで、諦める。

「ごめんなさい、買い物でそれどころじゃなくって」
「でも、工事するときに猫の像をどこに置くか困ったって噂聞いた事あるわよ」
「どこに置かれたか聞いてないかな」
「どこだったかしら……」

　片方の主婦が言葉に詰まったところを、隣の主婦が補完した。

「駐車場のあたりじゃなかったかしら？　上の方に、ちょこんと」
「あー……そうだったかしらねぇ」
「まあ、小さくて目立たないもの。わかんないわよねぇ」
「ありがとうございます」

　それから主婦同士で喋り出し、話題は布袋猫と関係ないものへとなっていく。サキリは礼を言って、早々にその場を離れた。

「ほーら猫さん、リボンだよー！」

　くるくるとリボンを動かしながら、夏朝はサンタ猫と戯れる。大学も探し終えて、残るはアウトレット……とその前に、キャンパスにもいたサンタ猫たちを物陰に隠していたのだった。サンタ猫も人に構われて満更でもないのか、無邪気にリボンを追いかけている。
やがてサンタ猫が疲れてごろりと寝転がりだすと、夏朝はその背を思うまま撫でた。猫は撫でられて気持ちよさそうに目を細める。

「おはぎちゃん、いないかな……」

　そんな中でも、夏朝はどこかで自分の飼い猫を探していた。

「あっ……！」

　にゃごー。
　鳴き声に、夏朝の目が揺れる生け垣の陰に留まる。そこには、白と黒の耳がぴこぴこと動いていた。夏朝は近付いて、その頭を撫でる。

「よしよし……と。遊んでないで、行かないと……」

「プレゼント、いかがですかー」
「タダやでぇ、ええもん入っとるでー」

　一方その頃。あきらやミルカはアウトレットに移り、プレゼント配りを続けていた。客たちの目はサンタの格好をした少女二人に集められ、その下で気儘に動き回っている猫を避けている。

「あらま」
「あたしにもください！」

　手を伸ばした子供の手に、プレゼントが渡された。それをきっかけに、ショッピング帰りの客がわっと近付いてくる。

「布袋猫さん、どこですかー」

　その横を通り抜けながら、綾花は布袋猫を呼んだ。シャンシャンシャンと鈴を鳴らしながら、クリスマス商品のポスターも探してみる。

――なんじゃなんじゃ！？

　その時！　彼らの頭に朗らかな声が響き渡った。その声に、夏朝が声を張り上げる。

「袋を持った素敵な猫さん、どこですかー？」

――わしも混ぜとくれ～！　こっち、こっちじゃ～！

　きょろきょろと夏朝が布袋猫を探すその横、通りかかったサキリが静かに言う。

「あっちだ」
「サキリくん！」

　一行はサキリに先導されて、布袋猫の元へと走った。

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