フード・プレゼン・バトル　〜語れ！　好きな食べ物！〜｜リアクション

フード・プレゼン・バトル　〜語れ！　好きな食べ物！〜

４　輝楽弥生によるプレゼン『オムライス』

「それでは一人目のプレゼンテーターです。輝楽弥生さん、どうぞ！」
店主・時田の紹介を受け、関西弁ギャル少女・弥生は木箱を並べただけの簡素なステージに上がった。その場にいる全員から、盛大な拍手が起こった。
拍手が止むと、弥生は持参していたエプロンをかけた。
黄緑の瞳で観衆を見据えると、オレンジ色のサイドテールが揺れた。
「今日は、祖母がやっている店『かがやき亭』の定番メニュー、オムライスを紹介しにきたんや。これがうまいんやで！　うちが実際に教えてもらった作り方で作ってみるで」
傍らのテーブルの上にはガスコンロとフライパンなど調理道具一式、それからオムライスの材料が置かれていた。
弥生は慣れた手つきで熱したフライパンに鶏肉、玉ねぎを投入する。
下味をつけながらご飯を入れ、ほぐしながら混ぜる。ケチャップをかけ、汁気を飛ばしながらフライパンを揺する。
すると、焦げたケチャップの香りが一気に店内を覆った。その奥に鶏肉のコク深い香りも感じられる。
それからバターをフライパンに投げ込み、フライパンを前後に大きく振り混ぜる。すると、えも言われぬバターの芳しさが鼻をくすぐる。
「まずはチキンライスの完成や」
皿に移し、次はオムライスの大本命、オムレツ作りに入る。
熱したフライパンにバターを投入し、バターが焦げ切る前に溶き卵を流し込む。
弥生は小気味いい手つきで菜箸を操り、卵を薄く焼いていく。
「生クリームなどは入れないで、素材の味で勝負！　トロトロのオムレツもいいんやけど、これは薄焼きオムレツ！　それが『かがやき亭』流や！」
そしてすぐに、皿に移していたチキンライスをフライパンに入れる。
巧みに手を動かし、フライパンを持った手をトントンと叩くと、薄焼きのオムレツがバウンドしながらチキンライスをくるんでいく。
「ここ、見せ場やで！」
と、弥生は白い歯を覗かせた。
その魔法のような手練には観衆からも「おぉ……！」とどよめきが起きた。
その美しいオムライスを皿に移し、最後に、小鍋で熱していた特製トマトソースをかけて出来上がり。
「ソースはすりつぶしたトマトの果肉入りやから、味や食感がしっかり残っているんや」
ふうっ、と息をつき、皿を観衆の方へ突き出す。
「完成や。これが『かがやき亭』の特製オムライスやで！」
こうして弥生によるプレゼンが終了した。

〜実食タイム〜
時田「これはうまい！　流行りのふわふわオムライスとは一味も二味も違うね。まるでオムライスの原風景を見ているようだ！　オムライス、かくあるべし！」
刀「卵が薄いのに味も食感もしっかりしてるし、チキンライスの少し焦げた感じも香ばしい。チャーハンでもそうだが、水分をしっかり飛ばしているから米がうまい」
マリエッタ「調理過程を見てから食べると美味しさが何倍にも感じられるね。それにこのトマトソース。ごろっとした果肉感と、酸味がクセになるなぁ。いくらでも食べられそう」
あんず「うわー！　おいしー！　毎日たべたーい！」

華やかさには少し欠けるかもしれないが、不思議と毎日食べたくなる。
素材の味をしっかりと出した極上のオムライスだった。