ぬいぐる図書館の夜｜リアクション

ぬいぐる図書館の夜

　翌日は、日曜日でお休みの朝。
「…あれぇ、もう朝？」
　曖浜瑠樹は、お茶会にも参加していたのに、うっかり最後まで持ち主に渡す本が決まらないでいたぬいぐるみ達の手助けをしていた為、夜明けの様子に全く気が付かなかった。
　気が付いたら自室で夜が明けており、眠い目をこすりながら窓を見る。
「そう言えば、皆どうだったのかなぁ……！」
　瑠樹は最後の慌ただしさが一気に心配になり、開館時間と同時に図書館に飛び込んだ。

　すると、ぬいぐるみ達はカウンターの向こう側で、きちんんと一体に対し一冊の本を目の前に置いていた。
「良かったぁ……みんな本決まったんだなぁ……」
「あ、君が瑠樹くんかな？」
　何人かいる司書の内の一人が、カウンターにのめり込むように見ていた瑠樹に話し掛ける。
「うん、そうだよぉ」
「はい、ラピちゃん。ラピちゃんはこの本を選んでくれたんだって」

　そうして、ふわふわのラピちゃんと一緒に渡されたのは、『寝子島のむかしむかし話』という絵本だった。

「ラピちゃん……選んでくれたんだなぁ……！
　昨日の皆も、楽しかったよ……ありがとうなぁー！」

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　そして、部屋でタイラ・トラントゥールはひたすらに悶々としていた。
「別にボクは悩んでなどいないというのに……」
　図書館から受け取ったシャルルを、自分の正面に置き、一緒に借りた本のタイトルを凝視する。

　シャルルが選んだのは「これであなたも素直になれる！」という煽り帯がついた『素直になるため』のアドバイスが載った本だった。

「悩んでいないというのに……誰かこの本を見たりしていな──そう言えば、あの時シャルルは、あのトリ頭と一緒に本を探しに！
まさか、アイツに見られたんじゃ……！！」
　思いついてしまえばきりが無く、タイラの表情は思いついて蒼白、思い至って真っ赤に、顔色が様々に変わっていく。
「……いや、僕は別に悩んでなどいないのだから、別に見られようと構わな──
　いや、しかし誤解されるのは……」

　悶々とし続ける事しばらく。
　タイラは『悩んでいるわけじゃない。シャルルが選んでくれたからだ』と繰り返しつつ、ついにその一ページ目に手を触れた──

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「猫語辞典……？」
　綾辻綾花は、ぬいぐるみのナイトと共に寮に戻って、その本のタイトルをまじまじと目に留めた。
　内容は『仕草や鳴き声で猫の感情を理解出来る』というもの。
　どうしてナイトはこの本を選んだのだろうと思い首を傾げると、綾花が先程まで目に入らなかったページに、小さな付箋が二つ貼られているのに気が付いた。
「付箋……？」
　不思議そうにその箇所を開く。

　すると、そこにあったのは──『大好き』と『なでて』のページ。

　綾花はじっとそのページを見て、それからそれ以上の長さで、昨日生き生きと動いていたナイトを見つめて。
「私も大好きだよ」
　そうして、細めた瞳に胸が幸せで一杯になりながら、しばらくの間、綾花はナイトの頭をずっと愛しさ一杯の思いでなで続けた──

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あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

参加者の皆様、最後までご覧頂きました皆様、誠に有難うございます。この度マスターをつとめさせて頂きました冬眠と申します。

この度は、海外から日本にも行われている『図書館のぬいぐるみお泊まり会』をテーマにさせて頂きました。
もこもこして柔らかそうなぬいぐるみ達を中心に取り巻くお話をと考えさせて頂きましたところ、小学生の方から大人の方まで幅広い年代の方に集まって頂きました。
本探しにぬいぐるみさん達に、と大分慌ただしくなってしまいましたが、集まってくださった皆様にも、集まってくれたぬいぐるみさん達も、緊張しながらも大変楽しく執筆させて頂きました次第です。

それでは、改めましてご参加、ご閲覧頂きまして誠に有難うございました。
それでは、ご縁ご機会などございましたら、またお目にかかれますことを願いまして。

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