いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな｜リアクション

いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな

「気分は乗らないけど……いいよ、遊んであげる」

　蘇芳の白い指が、因の頬を滑る。滑らかな肌のその先をクイッと持ち上げて、視線を絡めた。因は嫌そうに眉間に皺を寄せる。

「……あんまり気安く触らないで貰えますかぁ？」

　一刻も早くこの状況を抜け出したい。そう思いながら因がじりじりと纏わりつく不快感に耐えていると、ドアの開く音がした。黒服のスタッフが入ってきて、『二人とも振ってください』というカンペを見せた後、大きなさいころを置く。蘇芳は１、因は２。何が起こるのかと身構えていると、因の視界がどんどん下がっていく。鏡の前に立ってみると、そこには。

「……なんですかぁ？　これ」

　くるくるとカールしたツーサイドアップのブロンドは、まるで少年のように短く切られていた。いや、今の因の姿は五歳くらいだろうか、少年そのものだ。

「……驚いた。因君って、昔はこんなに可愛かったんだね」
「すおーさんってやっぱりお目目が腐ってるんですねぇ？」

　一番嫌いな自分の姿を、見られたくない相手に見られて因の機嫌は急降下する。蘇芳の皮肉とわかりきったそれに、因も皮肉で応じた。蘇芳はくすりと笑って、因の手首を掴んだ。

「君の性根の方が腐ってるよ？　まぁでも……」
「ちょっと、なにするんですかぁ」

　くらりと視界が傾く。蘇芳に押し倒されてベッドに沈みこんだ因は、得体のしれない恐怖に冷や汗を流した。蘇芳はにっこりと笑って口を開く。

「可愛い姿見たら気分が乗ってきた」
「……抵抗できない子供を押し倒すなんてぇ……」

　因はぴくりとも腕を動かさずに、ただ表情と口から吐く毒だけで蘇芳に抵抗する。

「いくらなんでも趣味が悪すぎるんじゃないですかぁ？」

　――そんなに力入れてないのに、ね？
　蘇芳は心の中で笑いながら、因を見下ろす。その手首にかかる力は蘇芳にしては軽く、五歳の子供とはいえ、全力で抵抗すれば抜け出せる可能性はなくもない。しかし因は彼を睨みつけるだけで、何も行動を起こさなかった。

「やだな、人聞きの悪い。抵抗出来ないんじゃなくて、しないんじゃないの？」
「……するだけムダだって解ってるんでぇ」

　そんな因の様子に、蘇芳は舌なめずりして、その身体に手を這わせる。

「抵抗しなかったこと…後悔しないでね」

　ぞわぞわと込み上げてくる気持ち悪い感触に因は舌打ちしてから、ありったけの憎悪を込めて口を開いた。

「……最悪」
「俺は最悪な顔してる因君が見れて、最高の気分だよ」

　笑う蘇芳の手が因の衣服の下に及んだ時、突如、ピピーッという笛の音とサイレンが部屋中に響き渡った。そしてバンッと音を立ててドアが開き、黒服のスタッフ数人が入ってくる。二人の背後のモニターに、怒ったような、はたまた困ったような顔をしたゆかりの姿が映った。

『ちょっと！　この番組は一応全年齢向けってことになってるので、それ以上はいけません！　解散解散！』

　それから乱入したスタッフが二人を引き剥がす映像が映って、そのまま画面は暗転した。部屋の中、ゆかりの声だけが響く。

『それにしても、本当に嫌い同士でマッチングしてしまうなんて……好意200倍っていうのに、反応が変わらない人初めて見ましたよ』

　ゆかりは眉をハの字に物憂げな顔して、愚痴をこぼした。しかし、すぐに元通りの、奇妙なほどの明るさを取り戻す。

『他のところでも不具合が生じていますし、またシステムを調整しなきゃいけません……はっ、はいはい！　裏話はここまで！　次のペアにいってみましょー！』