いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな｜リアクション

いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな

　なにか異常があったのかと、立樹はそっとドアを開け、声をかける。

「大丈夫？」
「あ、はい……もう着替え終わってるので……」
「どうかした？」
「それが……その……」

　何だと立樹が氷華の様子を見に行くと、そこには猫耳を頭にぴょこんと生やし、ミニスカチャイナを着た氷華の姿があった。裾を押さえて顔を赤くし、ぷるぷると震えているその姿を見て、かわいい……と思わず呟いた立樹は、はっと我に返り咳払いする。

「まぁ確かに、猫耳にチャイナ服ってすごい組み合わせだよね」
「そう……ですよね。猫耳は猫だから可愛いのであって……人間が付けても……」

　恥ずかしいやら何やらでしどろもどろの氷華。ちらりと立樹の姿を見てみると、凛々しい執事服でとても似合っていて、早くなる心拍数と火照る顔とで彼女の思考はかき乱される。

「でも……よく似合ってますよお嬢様」
「そ、そんなことない……です」

　平静を保てない。氷華は頬に触れてくる立樹の手を拒まずに受け入れるが、その視線はどこか遠くに向けられていた。立樹はそんな氷華の様子を見ながら、ふふっと笑う。

「今の俺は執事ですから。ね。こんなのもたまにはいいんじゃないかな」

　そういう立樹もまた心拍数が早くなっているのだが、氷華はもういっぱいいっぱいでそれどころではなかった。撫でられる頬。浮いた心を無視することは出来ない。立樹は平静を装いながらも、くすりと笑った。

「お嬢様は照れた顔も可愛いですね」

　そう言われて、氷華の体温はまた上昇する。否が応でも自覚するしかないそれ。
　――私は檜山さんが好きなんだ……。
　ここまで来てとうとうわかってしまった、自分の気持ち。氷華は離れていく手を惜しみながら、俯いた。立樹は言う。

「ちょっとやりすぎちゃったかな？　あんまりしたら相手さんに悪いし……」
「……いません」
「……え？」

　返ってきた氷華のか細い声に、立樹は思わず聞き返した。

「相手とか、そういうのは……いません……」

　改めて言われた言葉が染みる。てっきり彼氏がいると思っていたがゆえに、立樹はまた耳を疑いながらも、どこか雲の晴れたような気分になる。氷華は話題を変えるべく言葉を探して、却って妙な方向に口を滑らせた。

「と、閉じ込められたのが私ですいません……好きな人の方が良かったですよね」
「……いや。俺もいないよ。仕事ばかりで浮いた話しは全然なんだ」

　氷華は安堵しながらも、なんてことを言ってしまったのか……と頭を抱える。その傍ら、立樹は先程判明した事実を噛みしめていた。
　――そっかぁ……氷華さんフリーなのか……。
　そう考えた後、立樹の思考は前向きな方向に飛んで行く。
　――……これはちょっと期待してもいいってこと、だよな？

『……私としたことが、殆ど見守るだけに終わってしまいました。司会失格です』

　甘い雰囲気の中で、モニターにゆかりの姿が映る。ゆかりはどこか悔しさに溢れた表情で、二人の様子を見ていた。途端、頬を膨らませて零す。

『それにしても、なんなんですかもー！　甘酸っぱいですね、大人のくせに！』

　ゆかりからの理不尽なクレームをよそに、立樹と氷華の視線が絡み合ったり解けたりと忙しい。

『次に行きましょう、次に！』