いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな｜リアクション

いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな

◆樹氷の融けるころ

　高級ホテルのベッドの上で、氷華・クルバトフは目を覚ました。ぼんやりとした意識の中、寝返りを打つとそこには檜山立樹の姿がある。起き上がった氷華は、ぐっすりと眠っている立樹を揺り起こした。

「檜山さん？　大丈夫ですか？」

　暫し揺られてから、その瞼が開く。視界に移るホテルの部屋を見た後、氷華の姿を認めた立樹の顔は、さあっと潮の引くように蒼くなった。

「氷華さん！？」
「どうかしましたか？」

　立樹は慌ててお互いの服の状態と、氷華の様子と、昨日の記憶を確認して、何も間違いが起こっていないことを確認すると息を吐いて呟く。

「よかった……」

　一方、立樹とは違う理由で、氷華も内心穏やかではなかった。立樹が何時にもましてキラキラと輝いて、かっこよく見える。なんで！？　困惑している氷華の前、大きなテレビモニターに砂嵐が起こって、ゆかりの姿が映った。

『目覚めるとホテル！　隣には異性！　驚きました？　大丈夫、何も起こっていません。ご安心を。そんなわけで司会の不知火ゆかりでーす！　いきなりですが、今回の企画の説明から入らせていただきまーす！』

　ゆかりはこう言って、簡単に説明をする。立樹は困惑しながら、氷華は怒りを堪えながら聞き終えた。氷華は深呼吸をして冷静を取り戻すも、隣の立樹の姿にどぎまぎしてしまう。

「つまりそういう企画と……」
「……突っ込みどころが多いがもういい」

　――あんまりそういうのは好きじゃないんだけどなぁ。
　困ったような嬉しいような、立樹はそう思いながら、隣の氷華に笑いかける。

「……まぁ終わるまでしょうがないね」
「はい……」

　氷華は俯いて答えた。なんとか立樹のことを見ようとするが、どうも胸の鼓動を抑えきれずに、視線もついつい逸らしてしまう。
　――今、檜山さんと目を合わせられないのはスキニナールのせいだ……。
　説明のあったあの薬。100倍好意を持ちやすくなると聞いていた。きっと立樹がいつもより輝いて見えるのも、かっこよくてときめいてしまうのも、きっと、
　――……そうに、決まってる。
　悩める氷華の隣、立樹がどうしたものかと部屋を探っていると、突如呼び鈴が鳴って黒服のスタッフが入ってくる。スタッフは『二人とも振ってください』というカンペを氷華と立樹に見せた後、サイコロを差し出した。

「サイコロを転がせばいいの？」

　立樹は恐る恐るそれを受け取って転がす。抵抗しても無駄だろうと氷華は諦めつつ、彼に倣ってサイコロを振った。二人とも、出た目は５。『着替えてもらいます』というカンペを見せる。すると、もう一人スタッフが入ってきて、二人に衣装の入った箱を差し出した。

「えっ、着替えって……」
「何だ……？」

　スタッフが出て行くと、そこには静寂が訪れる。ともかく、着替えようと立樹は氷華をその場に残してバスルームへ入った。箱から出てきたのは、執事服だ。

「俺は執事服か……あんまり普段と変わらない気がするけど」

　と言いながらも、立樹はそれに袖を通す。さて向こうはどうかなと様子を伺うべく聞き耳を立てると、突如叫び声が聞こえた。

「なんでこの組み合わせ！」