【修学旅行】サイコロコロコロ、神戸と京都へ行こう！の旅｜リアクション

【修学旅行】サイコロコロコロ、神戸と京都へ行こう！の旅

●１日目　正午　京都駅前ニャクドナルド
　昼過ぎの京都駅前。
　ニャクドナルドのテラス席から眺める通りには、さまざまな人達が入り乱れている。
　平日の昼間ということもあり、その殆どは観光客か修学旅行生といった顔ぶれだ。
　皆、聞いたことのない外国語や方言を交わしながら、ニャクドの前を通り過ぎてゆく。
　あの店はどのバス停から行けばいいか、タクシー乗場はどこだろうなどと、スマホを片手に話している。
　きっと街中に軒を連ねる有名な店で食事をとって、京都観光の思い出を飾ろうというのだろう。

（まあ、普通は誰でもそうするよな）
　夜行バスを降りたばかりの雅樹は、テラス席でぼんやりと通りを眺めながら、そう思った。
　ニャクドの食事はドリンクだけで済ませ、街中で良さそうな店を探すという選択肢も一瞬頭をよぎったが、あいにくスケジュール的に難しそうだった。どれもこれもダイスが悪い。
「ダブルバーガーとフライドポテトとコーラ……まったく京都に来た気がしないぞ」
　店内に充満するフライドポテトの油の匂いから逃れるように、雅樹はテラスの一番外側に席をとった。
　この食事を終えた後は、清水寺へ向かうことになっている。高所恐怖症の雅樹にとって清水の舞台は楽しみでもあり恐ろしくもあったが、京都に来たからには足を運んでおきたい。
「アクセスは徒歩かバス。電車は乗り換えが多そうだからパスだな」
　さっさと食べて、清水寺までは歩いて行こうと思った。当分バスには乗りたくなかった。

　一方、同じ夜行バス組の日和にとっては、目に入るもの全てが新鮮な刺激だった。
「夜行バスは初体験だっんだけどちょっとドキドキしたなぁ。肩とか腰とか痛いけどこれもいい経験だよね♪」
　それはニャクドの食事とて例外ではなく、ニャクドで食事をした経験があまりない日和にとって、ハンバーガーやポテトの味はとても美味しく感じられる。
　フードの味わいだけではない。日和が見上げるニャクドの看板は、茶色なのだ。ニャクドはどこでも目にするが、こんな色の看板は見たことがなかった。
　おそらく、景観配慮という奴なのだろう。ニャクドに来る途中に見たコンビニの幾つかも、周囲の景観を損なわないよう、原色を控えた地味なカラーリングの店が幾つかあった。
（なんていうか……さすが京都、って感じだよね）
　ハンバーガーを食べ終えた日和は、好奇心に目を輝かせながら、店のあちこちを探検し始めた。

　いっぽう、倉前七瀬はいつもと変わらない表情で淡々とセットを口に運んでいる。
　食事の味云々よりも、皆と一緒の時間を過ごすことを楽しんでいるようだった。
「違う場所でみなさんと一緒にいただくニャクドナルドは、ちょっと特別な味がする気がします」
　七瀬は雅樹や日和と違って、新幹線組である。
　早起きしての乗車がこたえたのか、眠気覚ましの熱いコーヒーを舐めるように飲んでいた。
（料亭組の皆には、どんなご馳走が出とりますかね。後で聞かせてもらいましょうか）
「寝子高の生徒は集まって！　そろそろ出発しますよ！」
　準備を整えた大柴ツヤ子が、集合の旗を高く掲げた。そろそろ食事は終わりのようだ。
　かくして、ニャクド組の一行は清水寺へと向かう。

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