【三寮祭】桜花寮、お宝探しにゃー！｜リアクション

【三寮祭】桜花寮、お宝探しにゃー！

　移動中にも、甘い物への嗅覚鋭い女子２名が寮内の至る所の装飾からクッキーを見つけては、ニコニコ笑い合っているのを男子２名は温かく見守りながら。
　次の目的地である女子寮、七音侑の部屋に到着した。

「さ、次はウチの部屋だに！」

　先頭歩き、張り切って自室へご案内する侑であるが、その内心は意外と緊張しているようで。
　――　うぅー、ちゃんと片付けたし綺麗にしたけどやっぱりドキドキするにー……。
　一番特別な人を部屋の中まで入れるのも今日が初めて。
　日頃見慣れている部屋の中に、彼の姿が立っているだけで全く景色が違って見える。
　幸せ半分、どんなふうに見えているのか緊張半分。部屋の中を歩き回る３人を見つめながら、また一つ、大好きな人の存在感を意識したり。

　そんな部屋主とはまた別に、他にも複雑な胸中抱えている人物もいるわけで。
　――　女子の部屋……しかも侑が住んでいる部屋だと思うと妙に意識しちまうな……。
　当然の如く、侑の相手たる工藤耀もバッチリと男心的ドキドキを感じていた。
　ずっと隣りで感じていた気配に満ちた部屋。どこか懐かしいような、安心する雰囲気。
　いつも持っているお菓子袋の予備たちや、抱き締めたらやたらフワモコそうなぬいぐるみ、きっちり畳まれた陸上部のユニフォームたち。
　お宝を探す手の先に彼女の私物がある度に、思わずガン見しては探す手が鈍る自分に、『あー、もう！』と喝を入れる。
　どこか赤らむ顔を、見られないよう仲間たちから遠ざかっていたつもり、だったが。
　見逃してくれないのが友人というものでもある。

「手止まってるぜー耀」
「ンなこと、ねー！」

　完全にニヤニヤを隠す気の無い六月一日宮檸檬が、いつの間にかひょっこり真横にいれば必死に誤魔化す。

「……侑の部屋に変な事すんなよ？」
「おっ俺は変な事なんて！　……工藤こそ、初めての彼女の部屋どうなんだー？」
「どうもこうも無ぇっ。さっきお前の部屋に行った先輩とおんなじじゃねーの！」
「ほぉー……。っつーか、センパイは前に１回来た事あるし……」
「…………なんだって」
「ってか七音！　マジでどこに隠した！？」

　ぽそぽそ会話していた片方が、つるんと暴露した事を盛大に誤魔化しにかかったり。
　おいまてそこんとこ詳しく、などと男子がジャレ合っている最中、約１名がちゃくちゃくとお宝の在り処に近づいていた。
　――　女の子のお部屋だから、その点では探しやすいかも？
　澪乃澄佳は、己が嗅覚頼りにせっせと部屋内を物色している。
　むう、お菓子の気配？
　と、部屋の隅にあったのは大きめのカンカン。

「あっ、センパイ何かありましたー？　その中？」
「ううん……これは別の大事なものだね。あたしには分かるよう……」
「？？？　そ、そうなんですか」

　耀の追及逃れて檸檬がかけてきた言葉へ、澄佳、何やら物凄く悟りの境地な表情を浮かべ、そっとしておこうと暗に語る。
　同好の士（＝無類のお菓子好き）、触れてはならないものを理解しているようだ。

「そういえば、ヒントがあったねえ。尻尾ていうのはどれだべか？　侑ちゃんの尻尾の先、とか……？」
「にゃははー♪　澄佳先輩、良い着眼点だにー」

　間もなくして、『見つけたべ！』と澄佳が高々と桜の花びら型クッキーを掲げた。
　それは林檎を抱えた黒猫のぬいぐるみの間。
　侑の部屋の玄関から最初にあったぬいぐるみの尻尾に始まり、小物に付いた動物の尻尾たちが矢印となっていたのである。
　それを追っていった結果、澄佳はしっかりとゴールに辿り着いた。

「正解！　ぬいぐるみは貰った物とか自分で作った物もあるよー。黒猫は去年作ったんだー」
「侑ちゃんすごい！」

　褒めた拍子に澄佳のお腹がくるりゅぅと可愛らしい音を奏でた。

「ふへぅっ………は、恥ずかし……」
「いっぱい歩いてお腹すきましたよね」
「さ、じゃあそろそろ食堂でおかか料理食べよっかにー！」
「……おかか料理？」

　和気あいあいと、食堂目指す４人であった。