【三寮祭】桜花寮、お宝探しにゃー！｜リアクション

【三寮祭】桜花寮、お宝探しにゃー！

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　男子寮から女子寮へ、移動する際には必ず通る川があり。
　宝探しの面々たちが橋を使って川の上を横切っていく姿を、薄羽白露と花風冴来は静かに佇んで眺めていた。

「川を潜ってまで女子寮に来る子がいるって話だけれど、何の為にそんなことするんでしょうね？
　好きな子に会う為になら七夕の様で、ロマンチックと言えなくも無いけれど」
「七夕のお話にしては随分強引な彦星だ。ロマンチックといえばロマンチックにも思えてくるね」

　『そこまで潔い行動だと僕は好感が持てるな』と続ける白露に、川を見つめたまま『そういうものかな？』と首を傾げる冴来。
　そんな二人の脇を通って橋に向かう男女がもう１組。

「……どこまでついて来るの」
「え？　だって今日は誰でも女子寮入っていいんだろ？　俺行っても問題ない」
「そうじゃなく」

　椎井莉鳥の言葉をいつも通り斜めに解釈して返す北里雅樹に、それ以上突っ込むのを諦めた莉鳥の足は立ち止まる事なくさっさと橋へ。
　慌てるでも無く独自のペースで後に続く彼の背中を暫し観察してから。
　白露と冴来は何とはなしに目が合った。
　織姫のペースに彦星がついていっているのか、織姫の意思に関係なく彦星がマイペースなのか。
　どちらともなく、そんな印象を得ていたのを互いの表情から読み取っては、くすりと微笑み合った。

◇　◇　◇

　――　来寮者さんいっぱい、嬉しいね……あ、猫さん。……来寮猫さんは、やっぱり入れちゃダメ、かなぁ。
　大盛況中な食堂受付から、寮玄関を行き来しながら、恵御納夏朝は敷地内にいつもより多くいる気がする猫たちの姿を目に留めると、ついつい立ち止まって眺めたり。
　食堂から外にまで漂ってくる、鰹節の良い香りにつられたのだろうか。
　――　もし、余ったら……ちょっぴりお裾分け、してあげるね。
　猫さんたちへそんな想いを伝えては、そういえばと自室はどうなっただろうと女子棟方向を見つめる。
　お宝探しに開放中の部屋に、お出迎え兼お留守番中のぬいぐるみの黒猫、と……見えないもう一匹。
　終わったら、お疲れ様ってあのコにもお裾分けを持っていってあげたい、な。
　そう思いを馳せてから、まだまだ忙しそうな受付のお手伝いへと戻って行った。

◇　◇　◇

　大分人の出入りは落ち着いたかな、と人波から外れては羽生碧南は大きく伸びをした。
　すっかり目印代わりにされて、常に誰かと一緒にいれば少し一人の時間も欲しくなるもので。
　――　綺麗な木漏れ日。良いシチュエーションだなぁ。
　こういう時に、あの中から想い人の姿が現れたらどんなに良いか。
　早々ゲームのような展開は無いことを分かっていても、ついそんな考え過ぎれば自身に苦笑いして。

「さて！　私も少しくらいクッキー探してみよっかな」

　切ない想いを振り払うように切り替える。
　参加者に混じって楽しんでみようと、再び寮の中へ戻る碧南であった。