【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

三寮祭、夜の噴水広場にて

■夜も更けて
（あぁ、楽しかったですー）
　サバイバルゲームの心地良い緊張感と、それが終わった解放感に倉前七瀬は無表情ながらに充実感を満喫していた。
　あの後、七瀬はウォルターを追いかけるが、追いつくことは叶わず……だが、突如目の前に現れたオオカミを狙撃することに成功できたのだった。
（ウォルター先生のチョーク投げイメージしたら上手くいきましたー）
　ホクホクしながら七瀬が歩けば、いつの間にか噴水広場へと辿り着いていた。
　優雅な音楽に耳を傾ければ……目の前を、吸血鬼姿の金髪男性の姿がスッと横切った。
「ウォルター先生」
　七瀬は考える間もなく、その名を呼んでいた。
「なんだい、倉前」
　ゆるりと振り向くウォルター・B。
　見破られたことに対して感情を変化させず、いつもの様子で返すウォルターの声と姿に
「先生もいらしてたんですねぇ。射撃の腕、見せてもらいましたー」
　流石の腕前でしたね、と伝えれば満更でもなさそうな表情を見せるウォルター。
「射撃部の顧問だからねぇ。倉前の腕も見れて面白かったよー」
「見られてましたか、やっぱり」
「まー、最終的には当たってたからいーんじゃない」
　そっちも見てくれてたのか、と七瀬は思いつつ。
　流石の視力、そして何事もそつなくこなすハイスペックぶりに七瀬は思う。
（先生やったら、踊りもお上手なのでは？）
　そう思うと知りたくてたまらなくなる、好奇心旺盛な七瀬。
「先生、よかったら僕と一曲踊ってください」
「え？」
　目を丸くするウォルターの姿に
「先生、踊り上手そうですし、踊りの上手そうな人に女性のリードの仕方を教えてもらいたかったんですよ」
　そーゆーことねぇ、とウォルターは呟き。
「じゃぁ、課外授業してあげるよぉ」　
　七瀬へと手を差し伸べた。
「ありがとうございます」
　ウォルターの手を掴んだ瞬間。
「さっきの銃、まだ一発残ってるんだよねぇ。……僕の足を踏んだら、その時は……」
「勘弁してほしかですー」
　どこか背中に冷や汗を感じながら、七瀬はウォルターとダンスに興じるのだった。

　龍目豪に見られていたとは露知らず。
　ダンスを踊り終えた後、鎌八まもるはバニー・オークレイを自室へと招き入れていた。
「アンバーも綺麗なドレスのうさぎちゃんを見たいだろう」
　まもるの愛馬であるアンバーの名を出され、自然へまもるの部屋へやってきたバニー。
（こういうお家なのね……）
　きょろきょろと部屋を見回すバニーに、まもるは温かな紅茶を淹れ。しばし二人だけのティータイムを堪能する。
「慣れないヒールだっただろう、足は大丈夫？」
「少し歩き疲れたけれど、大丈夫だわ」
「せっかくだし、マッサージするよ」
　まもるはスルリとバニーのヒールを脱がせ、彼女のふくらはぎにそっと触れた。
「そんな、悪いわ」
「安心して。馬のマッサージは得意だからね！」
「もうっ。馬と一緒にするわけ？」
　バニーが唇を尖らせる。やはり、まもるにとって自分は妹のような存在でしかないのか、と表情を曇らせた。
「だって今日はポニテだし、君はいつものようにじゃじゃ馬だ」
　足だって思いっきり踏まれたし、とまもるは笑う。
「でも。思い通りにならない馬ほど可愛いものさ」
　バニーの足を優しくマッサージしながら、上目遣いにバニーを見つめウィンクするまもるの姿に。
「まもるってば……」
　既に仮面を外した頬が赤く染まってしまうのを見らないよう、顔を背けるバニーだった。