【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■対　太陽
　配給された銃を手に、二人は肩を寄せ合い寮内マップをじぃっと見ていた。
「で、ここには書かれてないんだけど、裏通路があってだな……」
　愛らしい女性姿なれど、真剣な眼差しでマップの解説をするエスカルゴ・臼居ちゃんの姿に、広い意味で尊敬の念を抱く史越奈津樹。
「で、きっとハンターはこうやってオオカミを追いかけるのが定石だから、抜け道であるここで張ってればオオカミを捕まえられる可能性が高いはずなんだよ」
「流石エスカルゴさん……！でも、優雅にっていうのがイマイチ……どういう風に……」
「そりゃあアレだよ、こう、背筋を伸ばしてだな」
「はい」
「たおやかに微笑んでだな」
「はい」
「余裕を見せて、だな」
「はい」
「……後はもう、気合い」
「気合い」
　そんなやりとりを裏道でこそこそ繰り広げていると
「おっ！カワイコちゃんはっけーーん」
　一際明るい声がかかる。
　七色に輝くスパンコールがビッシリなマスクにラメッラメのタキシード、というド派手な姿で現れたのは南波太陽。
　しかも太陽の視線にはエスカルゴのことしか見えていない模様。
「……あら。私のことかしら」
　エスカルゴが　たおやかに微笑んだ！
　太陽は　魅了された！
「そうそう！激まぶいってゆーか！」
「お褒めいただき光栄だわ、ほほほ」
　突然現れた太陽の姿。そして太陽がつけるマスクに違和感を覚える。
　ハデハデしいマスクでしっかり見る気も失せる程だが、良く見ればそのマスクは二重に思える。
　オオカミの印の一つだ。
　エスカルゴはアイコンタクトで奈津樹に身を隠すよう指示すれば、ゲームで培った勘で奈津樹は草むらへと身を隠した。
「うふふ、お兄さん。それじゃあ、あたしのお相手をしてくださるかしら？」
　エスカルゴちゃんが両手を広げる。
「え？何？ハグ？情熱的っすね、マジで！」
　太陽が近づいた瞬間、エスカルゴは太陽のお尻へと手を伸ばした。
　タキシードの裾から覗くオオカミの尻尾をエスカルゴはしっかりと掴んだ。
「ほーっほっほっほっほ！オオカミさん発見よ！」
「あ、ヤバイ、もうバレたっスか！？」
「文月！」
　エスカルゴの言葉に文月が飛び出る。
　早足で逃げようとする太陽をエスカルゴはしっかりと腕を掴み、羽交い絞め。
「カワイコちゃんに捕まるのは本望ッすけど！ヤローには撃たれたくないしぃ」
　バタバタと逃げようとする太陽に
「文月ーーー！！！僕ごと撃てーーーーッッ！！！」
「うわああああああ！！！！」
　文月の手に持つ拳銃から火……のようなペイント弾が三発発射され。
「うわぁぁぁ、撃たれたぁぁぁぁッス……」
　崩れ落ちる太陽、そしてドレスを真っ赤な血、ならぬペイントで汚したエスカルゴの姿。
「文月……それで……いい……」
「エスカルゴさぁぁぁぁぁあああああああん！！！！！」　
　こうして、エスカルゴという犠牲と共に、文月はオオカミを倒したのだった。
「……こんな感じでイイッすかね、あ、向こうでペイント落とすっスよ」

　こうして戦果を上げた奈津樹とエスカルゴ。
「エスカルゴさんって意外と……こういうの出来る人なんですね、作法っていうか」
「え？そう？普通じゃね？」
　笑うエスカルゴに奈津樹は思う。
（元星ヶ丘っていってたし、お金持ちだからなのかなぁ。……こういう一面でまた尊敬出来るところが一つ増えちゃったな）
　帰ったら、ウスイさんに今日のことを報告しよう。
　そう思う奈津樹だった。