【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■銃の手腕に
　サバイバルゲームの始まりに、己もハンターとして参加を決めた倉前七瀬。
（せっかくのお祭りですから、参加しないわけにはいきません）
　手渡されたおもちゃの銃を手に、七瀬の眠たげな猫目がキラリと輝く。
（さて、オオカミさんはどこにおるとですかね）
　広大な敷地を持つ星ヶ丘寮。
　キョロキョロと辺りを見回しながら七瀬は一人散策を始めるのだった。

　一方その頃、一通りダンスを楽しんだ後、オオカミとして寮内を徘徊する龍目豪。
　二重の仮面をつけ、オオカミの尻尾を生やし。
　言葉少なに豪は星ヶ丘寮内を歩く。
（打ち返せないから基本やられ役だが……あまりあっさりやられちゃつまらないだろ？）
　逃げる際に走れないことを考慮し、豪は木や建物などの遮蔽物から着かず離れず進んで行く。
　豪の存在がバレ、そこから星ヶ丘寮生……つまりオオカミの可能性があると思われても困る、と。
　いつもなら陽気な豪だが今日は言葉少なでダンディささえ感じさせる程。
　実質、運動神経のと勘の良い豪は何人かのハンターの攻撃を避け、逃げ続けていた。
　そんな折、豪は一人の知人の姿を見つけた。
（あれは……何やってんだあいつ。オオカミを追っかけてるんじゃないのか？）
　豪は鎌八まもるがバニー・オークレイを自分の部屋へ招き入れる所を目撃する。
（腕はいいのに、相変わらずポニテ好きだな……）　
　バニーの赤いポニテが揺れるのを、生温かい気持ちで見守る豪。
　しかし次の瞬間、更なる見知った人物の姿を見つけた。
　金髪で、吸血鬼のような恰好をした人物を見つけた。途端に、豪は姿勢を正す。
（ウォルター先生がハンターか！）
　見つかったわけでもないのに、豪はそっと後ずさる。
　ウォルターの白い魔弾ことチョーク投げの精度を見れば、彼がどれ程の射撃能力を持っているか一目瞭然で。
（これは戦わないに限るな）
　豪はそっと身を隠し、そして別方向へと去っていった。

　七瀬が寮内を歩く。七瀬なりにキョロキョロしつつ懸命にオオカミの姿を探すが、一向に見つかる気配がない。
（なかなか見つからんもんですねー）
　あまりにキョロキョロしすぎているのか、現れては不自然にＵターンする人々。
（……あれ？）
　一人の男が立ち去る背中、お尻部分には……茶色い尻尾が見え隠れ。
（オオカミさん！えっと、銃を構えて……！）
　相手の背中に標準を合わせ、ぎこちなく七瀬が銃の引き金を引けば。
（……！）
　七瀬の撃ったペイント弾は標的を外れ、木へとぶつかった。
（えっと、もう一発）
　表情の変化はないものの、やや慌てて七瀬がまた銃を構える、が次の瞬間。
　他方からシュパッとペイント弾が発射され、目の前の男の脇腹に被弾し、蛍光インクが飛び散った。
「わあ！」
　七瀬が発射元に目をやれば、吸血鬼の如く冷酷な雰囲気の衣装を纏った、金髪の男性の姿。
　マスクの口元はニンマリと弧を描いている。
　更に、金髪の男性の銃が草むらへ向けられ、もう一発のペイント弾が発射されれば、草むらから「ぐわぁ！」と声が響き。
　七瀬が草むらに近寄てみれば、悔しそうな表情をしたオオカミ役の星ヶ丘寮生の姿があった。
「……凄いです……！」
　まるで動きに無駄がない。自分とは月とスッポンだ、と七瀬は思う。
　金髪の男性は七瀬の姿を見つけると、クスクスと笑んだ。
「避けれるように撃ってないだけだよ」
　そう言うと、黒いマントを翻し、金髪の男性は闇へと消えていった。
　クスクスとした笑みと、先程の言葉に。
（……もしかして、ウォルター先生……？）

　七瀬の担任であるウォルター・Bによく似た容姿を持つ彼の行く方向を、つい追いかける七瀬だった。