【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪｜リアクション

【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪

●ドラム缶風呂もあるんだよ

　折角来たのだから懐かしのドラム缶風呂に入っていきたいという泉先生と共に、月詠は裏庭へと向かった。
　ドラム缶風呂はサキリが割りに割った薪で、カンカンに焚かれていた。
　一番風呂は泉先生である。
「ううーん！　この熱さ！　この景色！　青春時代を思い出す」
「湯加減いかがですか」
　月詠が尋ねる。
「熱い！　それがいい！　……だが、長湯は出来ん！」
　真っ赤になって笑いながら飛び出してきた泉先生に寮生たちが水をかけた。
　次は水着に着替えた月詠だ。
「いやうん熱い。でもやや熱めのほうが五右衛門風呂らしいと思う。これも猫鳴館ならではの文化だよね」
　うーんと一つ唸って。山となった薪を横目に、寮生たちの苦労をしのぶ。
「なるほど自分達で薪をつくらにゃならぬ。町で調達してもいいが丸太をとってくることもあるだろう。薪に適する木というのもあるし、切り倒しててもすぐには使えん。乾燥させる必要がある。怠れば死活問題。だから備蓄は十分に確保する必要あり……か。開放してよかったのかね？地下に温泉あるとはいえ」
「なあに、気にすることはないだろう。昔から猫鳴館はそうだった」
　鶏小屋の影から、泉先生が着替えながら答える。
「そうか。野暮な話だったね。――ああ、いい景色だね」
　森の緑。頭上の枝に小鳥が一羽、二羽。飛んできてピーチクさえずっている。
　小鳥の声に交じって、元気な子どもの声がした。
「おー！　ドラム缶ッス！　ドラム缶風呂ッス！」
　飛び跳ねるように駆け寄ってきたのは、古尾桐子だ。
「確か江戸時代の大泥棒が入って極楽極楽とかいってたやつッス！」
「五右衛門風呂だ。石川五右衛門が豊臣秀吉に釜茹でにされたという俗説からその名がついたという……おっと小学生には刺激的すぎたか？」
「よくわからんけどウチも入ってみたいッス！」
「そうか」
　月詠は泉先生がすっかり着替え終えたことを確認すると言った。
「着替えは鶏小屋の裏でするといい」
　ドラム缶風呂はギリギリふたりは入れる。小柄な月詠と小学生の桐子が一緒に入っても大丈夫そうだ。
　水着に着替えた桐子は、そろそろとつま先から湯に浸かった。
「うはー！　アツいッス！」
「無理するなよ？」
「ウスッ！　アツいけど風呂に入ったら１００数えてから上がるようにってよく父ちゃんに言われてるッスから１００数えるまで我慢ッス！　いーち、にー……」
　桐子は数え始めたが、９まで数えたところでざばんと立ち上がる。
「無理ッス！　１００数える前にゆでだこなるッス！」
「そうか。そのペースで１００まで数えられたらこちらも参るところだった」
「半分くらいまでなら我慢できそうかもっス……もうちょっとがんばるッス！」
　も一度しゃがんで、心持ち早めにカウントする。桐子は頑張った。月詠もそれに付き合う。
「よんじゅきゅっ、ごじゅうっ！　うひー！　熱い熱い！」
「それっ、でろー！」
　桐子も月詠も汗だくでまっかっかだ。
「うひゃー、のぼせたッス～！」
　近くにいた寮生に水をかけてもらって、はた、と桐子は月詠のスタイルの良さに気づく。
「ねーちゃん、おっぱいおっきいッスね！」
「まあな。君もがんばれよ」
　桐子は水着越しにぺたんこの胸を両手で押さえた。大きくなるのか、これは？
「うおおー！　お風呂上がりのコーヒー牛乳を所望するッス！」