ライブラリ・ラビリンス｜リアクション

ライブラリ・ラビリンス

■集合
　綾花、武道、モニカの声で、一同は慌ててエントランスに集まった。
各々の調査結果の共有もそこそこに、皆、新たに見つかった質素な鍵に視線が釘付けだ。
「ああ～、いいな～。そのあたり、私も探したのに～」
　樹が羨ましそうに声を上げる。
「まあまあ、受付カウンターの床、絨毯の下に隠してあったんだよ」
「しっかり床を調べないと見つからなかったかもしれないわね」
　武道とモニカの言葉に、修が口を開く。
「と、いうことは、西館を封鎖した誰かが隠した、ということになるのか」
「その可能性は、あるかもしれません」
　鍵を見つけた綾花は、その念入りな隠し方に誰かの意図を感じていた。
もしかしたら、その人物こそが、一同を図書館に呼び寄せた張本人かもしれない。
「人の名前らしきものなら、私達も見つけたわ」
「A.R。名前かどうかもわからないが、もしかしたら関係あるかもしれないな」
　紫と静が絵画の裏で見つけた名前に言及すると、続いて楓が声を上げる。
「A.Rなら俺も見つけたぜ。指輪の裏に彫ってあった」
　図書館の創設者か、あるいはその関係者の可能性はある、と。
考え込んでしまいそうな一同に、天吏が声をかけた。
「まだ、その鍵が西館の鍵と決まったわけではないわ。
まずは、鍵を開けてみてはどうかしら」
　それもそうだと気を取り直し、全員で西館の扉の前へと移動する。
綾花が大きな錠前に鍵を差し込んでゆっくりと回すと……
南京錠は大きな音を立てて外れ、西館への道が開いたのだった。
「よ～し、では早速、西館も探索するのですよ！」
「いや、タイムリミットだ」
　美咲紀が意気揚々と扉をくぐろうとしたところを、武道が押し留めた。　
見れば、図書館の窓から見える空は真っ赤に染まり、これ以上の長居はできないことを示していた。
「仕方ないな、今日はここまでだ」
「次はいつ来られるかわからないけれど、お楽しみは取っておきましょう」
　修とモニカに励まされ、一同は新たな探索地に心を引かれながらも、図書館を後にした。

■ところで……
「あのさ、私、みんなが探索してるのを見てて思ったんだけど」
　無事に図書館を脱出し、九夜山を下りている最中に樹が口を開く。
二度目の探索時間、樹はあえて探索場所を一か所に絞らず、
探索メンバーに危険がないか、怪我をしたりしていないかを確認して
いつでもバックアップできるように備えていたのだ。
その中で、気づいたことがひとつ、あった。
「誰か、左の部屋探索した？」
　樹の言葉に、一同は顔を見合わせる。
そう。
大量の蔵書や記録が収納されている受付カウンターに気を取られ、
左の部屋に足を踏み入れたものは誰もいなかったのだ。
運よく西館の鍵は発見できたものの、おそらく左の部屋には、
まだ数々の謎が残されているに違いない。
「次回の課題、というやつかな」
「次があれば、だけどな」
　静と修が苦笑して、一同は今度こそ夕暮れの山道をゆっくりと下っていく。
夕日に照らされた図書館は、その背中をじっと見守っていた。

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