隔絶された街の囚われ人（ＭＭＯＲＰＧ寝子島奇譚）｜リアクション

隔絶された街の囚われ人（ＭＭＯＲＰＧ寝子島奇譚）

　囚われていた女性は弱っていた。まともに歩くことも難しい。そこで円の提案で士が背負うことになった。残りは周囲を固めた。
　月の地図を頼りに一同は入り組んだ道を突き進んだ。方々で笛の音が上がる。追いかけてくる足音は小波から大波に変わろうとしていた。
　円は青い髪の女性に変身して囮になった。かなりの人数を引き付けて振り切った。再度、街で見かけた男性に化けて引き離し、急いで仲間の元に戻った。
「童顔だからってなめるなよー」
　逃げ場のない狭い通路で優の一撃が戦士を吹き飛ばす。
　複雑に分岐した道では士の起こした濃霧が方向を迷わせた。
「たまには相手に迷子になって貰うか」
　門の近くの広間でエヴァと刀が加わった。
　天野は一本の剣を刀に差し出した。
「僕のでよかったら使うかい？」
「もちろんだ！」
　受け取った瞬間、加速した。刀は追いかけてくる集団を撫で斬りにして戻ってきた。
「いい切れ味だ」
「それは、どうも」
　一同は塔の内部に入った。螺旋階段を上がる途中で三人の戦士と鉢合わせになった。
「ここは任せてね」
　扇子を扇ぎながらエヴァは先頭に立った。
「そんな格好で暑くない？　あたしが涼しい風をプレゼントしてあげるね」
　優しい言葉に反して相手を睨み付けると、扇子を一振りした。突風が戦士達を宙に巻き上げ、石畳に強かに打ち付けた。
「少し風が強かったみたいね」
　重なるように倒れた者達は微動だにしなかった。
　その場を凌いだ一同は先を急いだ。

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