放課後何する？｜リアクション

放課後何する？

　帰りの会が終わるや、源竜世はびゅんっ！　と教室をとび出した。
　他のクラスの知った顔が、校庭で、竜世に気付いて声をかけてくる。
「竜世、そんなに急いでどこ行くんだよ？」
「ナイショ！」
　校庭の土を蹴って、道路のアスファルトを蹴って。
　竜世は、一心に九夜山を目指した。
　岩がいっぱいのでこぼことした場所を見つけて、竜世は《ある物》を取り出す。
　ドラゴンの姿をしたカプセルギア――竜世の相棒、スターライトナイトだ。
「スターライトナイト、今日はヒミツの特訓だ！」
　にかり、スターライトナイトへと明るく笑いかける竜世。
「さあ、始めようぜ！」
　竜世の指が、スマートフォンの上を走る。
　それだけでA.I.C.O.のバーチャルパッドを通し、竜世とスターライトナイトは繋がることができるのだ。
「まずはフレイムチャージだ！　スターライトナイト！」
　炎のエフェクトが、スターライトナイトの足元から噴き出す。
　翼を一打ち、スターライトナイトはぐん！　と思い切りよく加速した。
「いいぞ、スターライトナイト！」
　加速しては、そのまま岩を避けんとスターライトナイトを走らせる、その繰り返しだ。　
　何度も、何度も。
　でこぼこした地面に幾度となく相棒のコントロールを奪われながらも、竜世は諦めることをしなかった。
「まだまだ！　このままじゃ終われねえよな！　もう一回だ！」
　考えるのは苦手だから体で覚えるぜ！　と挑戦に挑戦を重ねる竜世。
　じきに、でこぼこにスターライトナイトが足を取られる回数が減ってきた。
「ん、だいぶなれてきたな。……よし、こっからが本番だ！　もっと熱く燃やせ、スターライトナイト！」
　竜世の言葉に応えるかのように、スターライトナイトがスピードを上げる。
（フレイムチャージの出力を上げて……もっと！　もっと速く！）
　ギリギリ限界まで近づいてから岩を避ける、避ける、避ける。
　翻弄するようなその動きを以って架空の敵の背後へと回り込めば、
「いまだ、切り裂け！　ファイアートルネード！」
　腕が空気を鋭く裂くその軌跡を、炎のエフェクトが鮮やかに、どこまでもカッコ良く追う。
　その一瞬の輝きは、まるで流れ星が宙を走ったようだった。
　架空の敵を、フレイムチャージが呼んだ勢いのままにドラゴンの爪が切り裂く。
「……っはー！」
　ぺたり、その場に腰を下ろす竜世。
　頬を伝う汗を手の甲で拭って、竜世はにっと白い歯を見せた。
「今のはちょっとうまく決まったんじゃね？　オレってば天才！」
　自身を鼓舞するような晴れた響きの声で言って、竜世は呼び戻した相棒をそっと撫でる。
「へへ、だいぶ操作に馴れてきたからな。お前ともっと仲良くなれた気分だ」
　いや違うか、と。
　呟いた竜世の口元を、太陽みたいな笑みが彩った。
「気分、じゃねえな。仲良くなれた」
　スターライトナイトは応えない。
　けれど、陽の光を反射するその瞳の煌めきだけで、竜世には十分だった。
「オレもっともっとがんばるから、これからもよろしくな、スターライトナイト！」
　暮れていく夕空の明かりを受けて、小さな竜の姿は、どこか誇らしげに竜世には見えた。

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