【星幽塔】第一階層　星祭りの夜｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星祭りの夜

「星祭りかあ」
　水上桜は、お祭りの様子を観察して思う。
（印象としてはヴァルプルキスナハトとハロウィンをごっちゃにしたような……いや、あれはもともと同じようなものだったけ？）
「……でもまあ、楽しそうな雰囲気でなにより」
「お嬢さん、虹のお酒をどうぞ」
「えっ？」
　魔女姿のお姉さんにお酒を勧められた。
（ここが寝子島なら未成年の自分は酒を飲んだらヤバいけど）
「ここだと明らかに自分より若い子が酒飲んだりしてるので大丈夫よね……」
　そんなふうに星幽塔で何度か飲んだ結果、それなりに酒には強くなった。
　しかし桜はここでの出来事は夢の中だといまだに信じて疑わなかったりする。
　そんなわけで桜は虹色の酒が入ったジョッキを受け取り、適当に飲み始めた。
「これください」
「炸裂ハッシュポテトはどう？」
「……なんかフツウじゃなさそうな名前」
「意外とフツウだよ」
　どこかで見た白い髪と赤い瞳の魔女の勧めに結局買ってしまったハッシュポテトを食べ、他の店で適当に買った星型のミニカステラや弾けるこんぺいとうのようなお菓子も持って夜の街を散策する。
「それにしても、魔女がいっぱい」
　皆が皆魔女のコスプレ（？）をしている中、自分だけ普通の格好（といっても、胸当てや肩当がついたちゃんと星幽塔らしい服装なのだが）というのもなんかもったいない気がする。
「魔女の服着てみない？」
　魔女のお姉さんに声をかけられて、桜は足を止めた。
「それじゃ、私もコスプレしてみようかな」
　いろんな衣装が並んでいて、目移りしてしまう。
「これなんかどう？　似合うわよ」
　なぜかセクシーコスチュームを一押ししてくるお姉さん。
「え、ちょっとそれは……いろいろ見えすぎるので。またの機会にします」
　やんわりお断りして、普通の魔女の衣装を選択した。
「それもいいわね。空を飛ぶにはそっちのほうが気楽だし」
　ちょっと残念そうなお姉さんだが、にっこりと衣装を渡してくれた。
「空も飛べるの？」
「試してごらんなさい」
　箒を渡されたので、試しに跨ってみると。
　本当にふわりと浮き上がった。
「うわー、本当に空飛んでる！」
　意外とバランスを取るのも難しくない。
　なんだかすごく爽快感を感じて、花火に彩られた夜空をだんだんスピードを上げて。
　いつしかもう好き勝手絶頂に飛び回る桜。
　すると、隣に魔女が飛んできた。
（どこかで見たような？）
　でも思い出せない。幼い顔に似合わずグラマーなその魔女も、少し戸惑っているように見えた。

　フランチェスカに飲み物を差し入れた後、新田亮は魔女に声をかけられていた。
「このステッキで空飛べたり花火を打ち上げたりできるんですか？　楽しそうだな。やってみるか」
　勧められるまま杖を振ってみると。
「魔女になった！　って、胸がある？」
　魔女の服装に変身しただけでなく、女体化してしまった。
「……空を飛べるのは良いけど、女体化する必要は無いんじゃないだろうか」
　とは思ったが。
「まぁいいさ、折角だから上空から城下町を見下ろそう。きっと凄い景色が広がっているはずだ」
　気持ちを切り替えて、亮は箒にまたがり空へ舞い上がったのだった。
（思ったとおりだ。実にいい景色だな）
　小さく見える町の灯火。間近に迫るのは打ち上げられた花火。
　満足するまで楽しんだ後、
（箒に慣れたし低空飛行してみるのも良いな）　　
　と少し下へ降りてきた。
　すると、自分と同じような魔女がスピードを上げて飛んでいるのを見つけた。
（あれは……夢の中の彼女？）
　亮は、桜を現実にはいないハズだと思い込んでいる。
（これも魔法なのかな？）
　不思議に思う亮。
「……誰だっけ？？」
　一方桜のほうは、女体化している亮が誰なのか、最後までわからないままだった。