【星幽塔】第一階層　星祭りの夜｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星祭りの夜

「お祭りの屋台巡りするのです。屋台でしか見られないお菓子や食べ物がきっとあるのです」
　椿美咲紀は、先端が白い翼を広げた片手杖を手に張り切っていた。
「先ずは虹色のお酒を頂いてへんしーんするのです」
（どんな変化になるかな―）
　とわくわくしつつ、ごっくん。　
「ほわ、背中に翼が生えたのです。頭と手首にもちっちゃいのが生えたのです」
　背中や手首に力を入れると、ぱたぱたと羽ばたいて。
　美咲紀の体がふわっと浮き上がった。
「ぽわぽわと空中散歩も出来ちゃうのです。や～ん、楽しいのです」
　喜んで飛んでいた美咲紀だが、急にあることに気づく。
「あっ。でもスカートだから気をつけなくちゃ＞＜」
　美咲紀は寝子高制服の上に白い魔術系ローブを羽織った服装だったのだ。
　屋台も見たいので、低空飛行に切り替える。
「すごーい」
　星型の花火に見とれ、声を上げたりしながら。
　屋台を覗くと、星型のお菓子を見つけた。
「さすが星祭り、こんぺいとうのようなお菓子があるのです」
　まるで今見た花火のような、不思議な輝きを放つお菓子。
　口へ放り込んだら、口の中でパチパチ弾けた。
「甘くておいしー。わーい」

　次の屋台は……と見ると、赤い瞳に白いロングヘアの、見覚えのある顔があった。
「喫茶『迷い猫』本日は出張販売である」
　星幽塔で店を出しているマイペース芸術家、旅鴉月詠だ。
「食べ物も飲み物も無償提供の関係上、各食材も非常に安く卸されていたのでな。広告費用さ」
「これだけのお店を一人でやってるんですか？」
「星幽塔はろっこんが気兼ねなく使えるから準備も簡単。テーブル等あらゆる道具はスケブで持ってきた。封印した絵を置いて解除すればポンとね」
「お勧めはなんですか？」　
「提供するのは、ブレンドコーヒー、ドラゴンロールサンド、炸裂ハッシュポテトオレンジ風味……他にも色んな階層からやってきた食材を使った料理やデザートがある。お好きなのをどうぞ」
「炸裂ハッシュポテトって……大丈夫なのです？」
　穏やかでない名前に、美咲紀はちょっと不安げな表情になる。
「大丈夫、腹が痛くなったら薬草を使った料理を提供しよう」
「それはちょっと遠慮したいのです……」
「一口食べてみるといい」
　差し出されて、やや迷ったが。
「えーい、何事も挑戦なのです」
　思い切ってハッシュポテトを口に入れた美咲紀は、意外そうに首を傾げた。
「あれ、爆発しないのです。美味しいのです」　
「危険なのは名前だけ。詐欺だね」
　月詠は涼しい顔で言う。
「なら安心なのです。それじゃ、今のハッシュポテトにコーヒーに、ドラゴンロールサンドもください」
「毎度」
　食べ終えて店を出る美咲紀に、月詠は言った。
「魔物食材の研究をしている店舗として、今後も色んなものを冒険者に持ってきて欲しいね」
　頷いて答える美咲紀。
「はい。私ももっともっといろんな美味しいものを食べてみたいのです！」　
　
　次に美咲紀が向かった屋台は飴屋だった。
「お星様なかたちの鼈甲飴風なのとか。飴細工もあるですね」
「らっしゃいお嬢さん、どんな飴を作ろうか」　
「リクエストできるのです？　それじゃあ……」
　しばらく後。見事な羽の鳥が形作られた。
「すごいのです！」
　鳳凰の形の飴細工を作ってもらい、美咲紀は大喜びだ。
　さらに、カステラとワッフルの店が待っていた。
「星型のミニカステラにミニサイズ星型ワッフル。美味しいもの沢山で幸せなのです」
　かなりお腹はいっぱいだけど、買っていくことにする。
「ワッフルはクッキーのようで後で食べても美味しそうなのです。もちろん焼立てが一番美味しいのですけど！」