【星幽塔】第一階層　星祭りの夜｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星祭りの夜

「ん？　誰か挑戦者が来たようだな。これは面白くなってきた」
　亮がつぶやく。
　小さな翼で屋根まで飛んできたアリスに、
「小さな挑戦者さん、その体で弓が引けるのですか？」
　フランチェスカがにこやかに尋ねる。
「大丈夫、私はこれでやるわ」
　そう言うとアリスは、スカートの下から青い愛銃を取り出した。
「いいでしょう。３０秒のうちに、どちらが多く的を打ち抜けるかで競いましょうか」
「それでいいよ」
　フランチェスカの提案に、アリスが応える。
「いいぞ～、どっちも頑張れ！」
　観衆はすっかり盛り上っている。
「アリス、頑張れなの～！」
　一際大きく、ステラの応援の声が響いた。
「そこのあなた、時間を測ってもらえませんか」　
「俺が？」
　亮は驚いたが、断る理由もない。引き受けることにした。
　観衆の注目を一身に浴びながら、アリスは臆することはない。　
（対決って燃えるよね。真剣に楽しむよ！）
　フランチェスカとアリスは背中合わせに立ち、命中した花火の数は観客が数えることになった。
「よし、用意はいいか？　３、２、１、スタート！」　
　一斉に打ちあがる花火。
　フランチェスカが射る。アリスが撃つ。
　赤や青、黄色に緑、ピンク、紫。
　次々と、命中した花火が美しく光を散らす。
「１、２、３、４……」
　二人の記録はどんどん伸びていく。
「すごい……どっちが勝つだろう？」
　まほろと夏朝も息を詰めて勝負の行方を見守っている。
「……そこまで！」
　亮が勝負の終わりを告げた。
「フランチェスカの命中数は……１５！」
　どっと歓声が沸きあがる。
「アリスの命中数は……」
　アリスは、しっかりとその数を数えていた。
「１６！」
　耳を劈くばかりの歓声が沸きあがる。
「やったあ！」
　興奮して頬を染めたアリスの小さな手をフランチェスカは取り、上に掲げてみせた。
「あなたの勝ちだ。素晴らしい」
「やったなの～！」
　ステラが飛んできて、アリスに抱きついた。
　拍手を背に屋根から下りてきたフランチェスカに、亮が声をかけた。
「お疲れさま。差し入れに飲み物をご馳走させてくれないか。虹色の酒以外で」
「ありがとう」
　フランチェスカは笑顔で答えた。
　
「すごかったね……あれ、虹色のお酒？」　
　対決を見終わった人々が散っていく中、夏朝とまほろは、虹色のお酒を配っている魔女を見つけた。
「星幽塔ならお酒も飲めるはずだから、遠慮なく……」
　二人は虹色のお酒を受け取る。
「綺麗……乾杯する？」
　一緒に虹色のお酒で乾杯する二人。
「「それじゃ……かんぱーい！」」
　二人は虹色のお酒を飲み干し。
「わ、おいし……みゃ？」
　夏朝の視点が、急に低くなった。なぜか四つんばいになっている。
　手を上げてみれば、可愛らしい肉球。
（ね、猫さんになってるー！？　えっ、それじゃ遠野さんは？）
　目を上げた夏朝猫は、思わず鳴いた。
「みゃ！（可愛い！）」
　可愛らしい白猫がそこにいた。
「……！」
　猫目を見開いて肉球を見つめているまほろ猫に、夏朝猫は声をかける。
「みゃー、みゃー？（遠野さん、大丈夫ー？）」
「……みゃー（猫さんになったよ）、にゃご……（びっくりしたけど……ふふ、夏朝ちゃんの猫姿も可愛いね）」
　改めて夏朝が建物の窓を見れば、茶白猫の茶を橙にしたような橙白猫が映っている。
「にゃー」
　二匹は人波を避けて、塀の上にぴょんと飛び乗り。
　さっきとは違う気分で夜の散歩へ繰り出した。
　