【星幽塔】第一階層　星祭りの夜｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星祭りの夜

　同じ頃。
「『星祭り』？　こんな素敵なお祭りがあるなんて……！　……来れて良かった！」
　無表情ながら、恵御納夏朝の声には喜びが滲んでいた。
「星幽塔の成り立ちを祝うお祭り……いろいろあったけどこうやってお祭りが出来るくらい平和になったって思うと嬉しいよね」
　友達の遠野まほろも、のんびりと眠そうな目ながら、口数が増えていた。
「夏朝ちゃんともいっぱいいろんなところに行ったよね。一緒に行けないときもあってそんな時もきっと頑張ってんだろうなぁ……って」
「そうだね……いろいろあったから、平和ってとっても嬉しい」
「うん……こうやってお祭りを一緒に回ることが出来て嬉しいよ。これからもよろしくね」
「僕のほうこそ、よろしく」　
　二人が歩いていると、魔女の姿のお姉さんから声をかけられた。
「お嬢さん方、特別な星の力が宿ったステッキで魔女にならない？　お貸しするわよ」
「ステッキで魔女さんになれる……！　とっても楽しそうだね……！」
　まほろが言えば、
「星の力が宿った特別なステッキ……？　折角だから借りてみよう」
　夏朝も同意した。
「ステッキを振れば魔女に変身できるし、花火も上げられるわよ」
　そう言われて、
「えいっ」
　お姉さんから受け取ったステッキを一振りすれば……魔女さんに変身！
「似合って……るかな？」
　白い猫耳フードの魔女の姿になったまほろに、夏朝は瞳を輝かせる。
「遠野さんの魔女さん姿……可愛い！」　
「夏朝ちゃんも可愛いよ」
　とんがり帽子と魔女服をまとった夏朝に、まほろも微笑む。
「二人とも似合ってるわ。箒はどう？　これで空も飛べるわよ」
「すごい！　二人で一緒に魔女さん体験！」
「空を飛ぶのは初体験だなぁ。ちょっとドキドキする」
　二人は箒に跨り空に舞い上がった。
「星型花火とか猫さん型花火とか、打てるかな」
　夏朝が飛びながらステッキを振る。
　まずは星型花火。
「花火も上げられるんだね…･…えいっ」
　まほろが上げた花火には、猫耳がついていた。
「ねこさんに見えたかな？」
「……あ、猫さん型花火は猫さんみたいに動くんだね、可愛い！　えいっ！」
　夏朝も続けて猫花火を空に放つ。
「ふふ、夏朝ちゃんが上げた花火も猫さんだね」

　その時、歓声が聞こえてきた。
「射手座のアステリズム、フランチェスカ・Ｄ・Ｓ！　星の力の矢を放つ！」
　フランチェスカの番えた矢が夜空を飛び、星型の花火に命中した。
　観客たちは大喜び。
「おお、フランチェスカさんは弓の扱いが上手いな。よくあんな的に当てられるものだ」
　店から出てきた新田亮が感心する。
「誰かフランチェスカと勝負するものはいないか？」
　酔っ払ったおじさんの声に、小さな女の子の声が応えた。
「はい！　対決したい！」
　観客たちがどよめき、道を開ける。
　手を上げたのは、水色の髪の幼女……アリス・ミーティアだった。　

「面白そう……」
　夏朝とまほろも見物することにした。

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