【星幽塔】第一階層　星祭りの夜｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星祭りの夜

「いらっしゃいませー！」
　水色のロングヘアのアリス・ミーティアはいつものように給仕のお仕事を頑張っていた。
　アリスは星祭りの前日からそわそわわくわくしていたのだ。
　天使のような白い翼で飛びながら、ぶつからないようにうまく人を避けつつ楽しそうに虹色の飲み物を運ぶ。
「虹のお酒をお持ちしましたー！」
　テーブルには美味しそうなおつまみが並んでいる。
（おつまみ食べたいな）
　そんな思いが顔に出て、お客さんが声をかけてくれた。
「姉さんも一緒に飲んでいきなよ」
　髪型や服をしょっちゅう変える、かわいくておしゃれで胸の大きいアリスはお客さんから引っ張りだこだ。
「ありがとう！　みんな優しいよね」
　満面の笑顔で、アリスはジョッキを手に取り、お客さんのジョッキと合わせる。
「乾杯！」

「星幽塔に来てから戦ってばかりだな。たまには息抜きをしよう」
　新田亮は、そう思ってＢａｒアストラルを訪れた。
（お、ステラ発見。話しかけてみるか）
　ロングの金髪、大きな目が可愛いステラ・ラ・トルレはグラスを手にご機嫌だ。
「いただきますなの～♪」
「ははっ良い具合に出来上がってるな。楽しそうで何よ……」
　話しかけた亮は、グラスの中身の色に驚いた。
「てなんだその虹色の物体は。飲んで平気なのか？」
　ステラを心配する亮に、おじさんが声をかけてきた。
「坊主、お前も飲みな」
「すみません、お酒は苦手なので遠慮します」
　だが酒飲みのおじさんはしつこかった。
「骨のある男は酒を飲むものだ」
「いや……オジサン骨しか残ってませんよ」
　亮の言う通り、おじさんは虹色の酒の影響で骨格標本のようなガイコツになっていた。
「おいしいのに～、きゃはは！」
　隣の若い女性のあられもない肢体に、亮は目のやり場に困った。
　声からすると若い女性のはずだが、奥まで見えすぎていた。
（人体模型みたいになってるし……）
　普通の筋肉ならまだしも、筋組織や内臓を見ながら酒を飲むのは悪趣味だと思う。
「なぁステラ、悪いことは言わないから別の酒にしないか？」
「えーっ、つまんないなの」
　むくれたステラのところへ、仕事を交代してもらったアリスがやってきた。
「ステラ、花火の下でお酒飲まない？」
　酔ってテンションが高めになっているアリスが声をかける。
「いい考えなの！」
　ステラも元気に返事をし、二人は店の外へと出ていった。

「私はビールの形の花火を打ち上げるよ」
　アリスがステッキを振ると、光が空に向かって打ちあがる。
　それは中空で開き、ビールが入ったジョッキの形となった
　ドーン！
「わーい♪」
「美味しそうだよねっ」
　はしゃぐ二人。
「次は？」
「じゃあ、星の形の花火。流れ星みたいにするね」
　そう言いながらアリスは続いて花火を打ち上げた。
　流れ星のように星の形の花火を動かす。
「きれーい！」
　色んな色の星を降っていく。
「みんなの願いが叶うように願って打ち上げたの」
「アリスの願いは？」
「私の願いはこれからもみんなで楽しく過ごしたいのと……Ｂａｒアストラルが繁盛しますように」
　アリスがにっこり笑う。
「でもとりあえずは、ステラと並んで花火を見たいな」
「それなら簡単なの」
　二人は、ジョッキをつき合わせ、虹のお酒で乾杯した。
「やっぱりお酒は美味しいね！」

「あれ？　身長が縮んでる？」
　気づけばアリスの背が小さくなっていた。
「１０歳ぐらいになってるなの。お酒のせい？」
「そういうステラもちっちゃくなってるよ。可愛い！　胸は無くなってるね」
　豊かだったアリスの胸は今はぺたんこだ。
　試しに翼で飛んでみた。
「身軽で早い！」
「すごいすごい！　競争するなの！」
　二人ははしゃぎながら追いかけっこを楽しんだ。
「あれ、なんか人が集まってるね」
　二人は人々の視線の先の屋根を見上げる。
　
「何の騒ぎだ？」
　亮も、人々の歓声を聞いて店の外へ出てきた。

このページにイラストを設定する