夢から出てきて！｜リアクション

夢から出てきて！

野菜原ユウがゆめめサイダーを飲みながら、駅近くに落ちてくる「巨大な朝ごはん」を眺めていた時、鬼河内萌はこっそりユウの様子を見守っていた。駅のほうで起こっている出来事に驚きつつも、顎に手を当てた。
「ユウくん……面白い夢、見たんだ～。よかった。現実に巨乳美女とか出て来たら危なかったよ」
　萌はほっとして、無い胸を撫で下ろした。
「って、誰が無い胸だよ！？」
　一人で騒いでいるうち、ユウは駅広場の方へと歩いて行ってしまった。
　萌は素早く自販機の前へ移動する。
「夢が現実に出てくる、か」
　躊躇うことなくゆめめサイダーを購入した萌は一気に飲み干した。
「ぷはっ」
　と、突如光に包まれた萌は、魔法少女ピンキーモエに変身していた。
「！　やった。今日がこの夢で良かったぁ」
　萌は嬉しさのあまり、その場でくるりと体を回転させる。
　今日の夢はピンキーモエに変身し、気になっている野菜原ユウとカレーを食べる夢だったのだ。
と、その時。
「うああっ」
「へ？」
向こうから全力で走ってくるのは、少しだらしない格好をした少年だった。
「そ、そこの魔法少女！　ちょっと助けてくれ！」
「な、何？」
少年の後ろを見やると、巨大な猫型モンスターが追いかけて来ていた。
「魔法で、頼む！」
「ご、ごめん、ちょっと無理っ、ほんとごめん！」
　萌は地面を蹴って大きく跳躍すると、駅前の街灯の上へ着地した。
「ふう。健闘を祈ってるよ！　……じゃあ気を取り直して、新たな時代に誘われて、ピンキーモエ、華麗（カレー）に活躍！」
　決めポーズと共に高らかに言い放つと、駅前にいた人々から拍手が起こる。
「カレー魔法！」
　萌が荷電粒子ビーム竹刀を振ると、目玉焼きなどにカレーがトッピングされて行く。
「うんっ、確かに今日ボクが見た夢だよ！」
　と、駅広場にユウの姿を見つけ、隣に飛び降りてみる。
「ユウくん、ちょっと食べてみようよ」
「鬼河内？　……面白い。いいねぇ」
　二人は駅広場の朝ご飯へ向けて走り出した。

　勢いよくかじりつくとカレー味の目玉焼きは絶品だった。
「おお、イケる」
　ユウも美味しそうに食べている。
「んんーっ、カレーをたくさん食べられて幸せだなぁ」
　と、その時、萌は自分の胸元で光が弾けたような気がして、視線を落とした。
「……え、えぇー！」
「おお、夢通り」
　萌のバストが三十七センチではなくなっていたのだ。
「えっ、えっ、どういうこと？」
　両手で鷲づかみ出来るほどに育った乳、萌は動揺を隠せない。嬉しいが、それ以上に驚きの方が強かった。
　すると、ユウは苦笑いを浮かべながら頭に手を当てた。
「いやぁ、こっちの話」
「も、もしかしてユウ君の夢って巨乳の」
　と、萌とユウ、そして巨大な朝ごはんの数々に夕日が当たった。すると夢から出て来たものはすべて消えてしまい、
ついでに萌も三十七センチに戻っていた。
「一瞬だけなのおぉ！？」
　そして、西の山に太陽が沈んで行く。

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