きづいたら、あかちゃん｜リアクション

きづいたら、あかちゃん

　こうして美姫と湊弥は車遊びを始めた。ぶーん、と言いながらミニカーを動かす湊弥によりそい、美姫も「ぶーん、ききーっ」など口ずさみミニカーを解り易く動かしてみせる。
「♪」（みきちゃんもおじょうず！　はやいなー♪）
　上機嫌の湊弥に美姫も「こういう遊びが好きなのね。かっこいいよね、お兄さんみたい♪」と楽しそうである。そのうちに他の子供達も集まり、皆でドライブごっこを楽しむのだった。

　修は美姫たちの様子を見、首をかしげた。が、すぐに別のことを思い出す。
「嬉野の弟さんも、姿が見えないんだよな。なんか焦っているみたいだったし、他のところの様子見も兼ねて探してみるか」
　修は事情を美姫に話すと美咲紀とまほろへの伝言を頼み、奏の後を追うのだった。

　＊：＊：＊

　所変わって、３歳児クラス『すみれ』組。そこでは子供達が元気にお歌を歌っていた。その中におかっぱ頭の元気な女の子が１人。
（おうたってたにょしーれすにぇー♪）
　名札には『みぬま　ことこ』と書いてあり、スカートからはちょっぴり愛らしいおたまじゃくしの尻尾が見えている。その正体は……ほしひとの１人、普段は子ガエルの姿をした見帰り沼のコトコであった。だのに何故か席やロッカーがあったのはさておき、コトコは楽しそうに過ごしていた。
「しぇんせー、ちゅぎはにゃにすうんれすかねー？」
　お友達がいっぱいいて楽しいコトコにとって、保育園での全ての事が楽しくて仕方が無いようだ。先生はにっこりと「お外で遊んできていいですよ」と子供達にいう。と、早速コトコに声をかける女の子の姿が。
「ねー、おままごとしよー」
「はいれす！　とー、おままごとしゅるでしゅ。……あえ？　おままごちょって、なんれすか？」
　こんな具合だったがコトコは誘われるがままに、おままごとを始めるのであった。

　＊：＊：＊

（がまんできないよ～、カナねえねえ、たすけて……）
　６歳児クラスから３歳児クラスのお友達が使うトイレの前で、咲耶は泣きそうな顔でもじもじしていた。だが、そこで聞き覚えのある声を聞く。
「さっきゅん！　そっちにいるの？」
（あ、カナねえねえ！）
　姉である奏の声に、咲耶の表情が僅かに明るくなる。意を決して「ねーね！」と呼びかける咲耶。だが、奏は気づかない。
（このままじゃ……）
　大惨事は免れない。それは避けたいところである。咲耶はもっと大きな声を出そうと息を吸った。
「かなねーねー！　たすけ」
「せんせー、おもらししちゃったぁ……」
　咲耶の声を掻き消す、３歳児クラスのお友達！！　奏は腰に巻くタイプのエプロンを握られ歩けない！　奏は声をかけてきた女の子の頭をなで、そっとしゃがんだ。
「あー、これは酷いわぁ……。でもお着替え持って来とるんやろ？　まずは持っといで。掃除はうちがしたる」
　安堵させるように笑う奏。だが、その後からとんとん、と肩を叩かれる。ふりかえると……７歳になるはずの弟によく似た女の子（？）が今にも泣きそうな顔をして「ちっち……でる」と言っていた。
「えっ？！　ってこれマズいわ！　誰かこっちの掃除手伝って～～！？」
　奏の『ちっちセンサー』も思いっきり反応。早く咲耶似の１歳児をトイレに連れて行かねばならない。だが、不幸にも体験者や先生が近くにいない。
（あかん！　落ちつかな……）
　内心焦っていると、やはり心配だったのだろう。修が走ってきた。
「嬉野、弟さんは見つかったのか？」
「ううん。っと、その前にちょっと手伝ってくれへん？」
　奏は修に事情を説明すると、修は「わかったよ」と後片付けを手伝ってくれる事に。やはり彼女の側にいた１歳児が女の子に見えたようだ。
「ほな、修くん頼んだわ！　いくで！」
「ん！」（かなねぇねぇ！　解ってくれたんだ！）
　奏は修に後を任せ、超特急で咲耶を座るタイプのトイレへと連れて行くのだった。

※しばらくおまちください※

「ふぅ、間に合ってよかったなぁ」
　奏は咲耶のお洋服を整えながら、少しだけ頭が痛くなっていた。目の前の１歳児がどう考えても弟・咲耶としか思えなくなっていたのである。外見は女の子っぽいが、抱っこした途端男の子じゃないか、と考えた途端に……である。
（男の子と女の子って抱っこした感触がぜんぜん違うんよね。この子は男の子や。そして髪留めや髪型からしても。でも、なんで縮んでるん？）
　それが不思議でしょうがない奏。しかし、それは本人も全くわからない。しかたなく奏は咲耶を連れて１歳児クラスへと向かった。

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きづいたら、あかちゃん

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