春宵の候、三寮お泊り交流会｜リアクション

春宵の候、三寮お泊り交流会

●猫鳴館へようこそ・３

　足りなくなったうちの一人、月詠は、住む者のないボロ部屋にいた。
「充分なおもてなしができない事は知ってるからその分自由に寛がせてもらうよ」
　持ってきたスケッチブックをびりびり破ると、出てくるわ出てくるわ。
　ハンマー、釘、のこぎりなどの工具から、怪しまれないよう町から頂戴してきた廃材や、ペンキや壁紙などの資材まで出てきて、あっというまに部屋の中がいっぱいになる。
「工房か何かだと思ってない？　その通りだ」
　月詠はキリリと虚空を睨む。
　月詠、この機会に、このボロ部屋をリフォームしようという腹積もり。
　たまに散歩に訪れるので、勝手知ったる猫鳴館。なんやでお世話にもなっているし。
　こういう機会に腕を奮って、恩返しをしてもいいじゃないか。
「場所と材料と時間があればそこが私のアトリエになるのさ」

◇

　もう一人、豪は、猫鳴館の大部屋から行ける謎の地下空間にいた。
　ほこりよけのマスクでしっかり口を覆い、ヘルメットの強力ライトを点けて、時折地図を確認する。
　地図はかつての探検を元に作ったものだ。
　他に探検したい仲間がいたら『穴探索隊』を結成しようと思っていたが、いなかったので、たったひとりの『穴隊長』である。命名しておいてなんだが、穴隊長ってなんかエロい。
　それはともかく。
「地下は変わりないだろうか。Ｇやネズミの大群に会わないといいが……」
　豪はライトであたりを照らしながら歩いて行く。
　地下は１年前よりきれいになっている気がした。温泉を利用する人の往来があるためだろう。温泉までの道は、足元が見える程度の明かりも整備されている。
「ねずの鳶色彦はいるかな……」
　豪はヘッドライトで照らしながら、かつて出会ったこびとの少年を探し始めた。