いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな｜リアクション

いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな

「……って、俺たち何言ってるんだろう……」

　変身を終え、我にかえったアカリが呟いた。そのままぺたぺたと身体を確認すると、悠月と違って肉体に変化がないことがわかる。

「くっ……女になった事が不本意だがありがたい」
「むー……また女装か……」

　すると悠月がアカリの方を見て、彼も自分と同じように女体化したと勘違いしたのかこう言った。

「来島、お前もか。しかし随分と……ないんだな」
「なっ……当たり前だろ！」

　そういう悠月の胸はたわわに実った果実のようでいて、崩れることのない彫像の美女のようでもある。悠月の様子を見ていてアカリは背後に忍び寄るツライナーに気付けなかった。

「男のままだっつーの！　間違えてんじゃねーよ……」
「後ろ！！」
「ってうわっ！？」

　ツライナーの拳がアカリの横を力強く過ぎていく。アカリは思わずその拳とは反対方向に飛び上がり、木の枝の上に乗る。ツライナーはアカリから悠月へ狙いを変えた。

「遊んでる場合ではないな。行くぞ」
「こっちの台詞だっつーの！」

　敵の拳が動くより前に、悠月は拳を敵の腹部にぶち込む。そのまま捻じると敵は叫び声を上げながらはるか後方へ吹っ飛んでいった。

「変身したことで攻撃力が上がっているのか」

　そしてアカリは木の枝をひと蹴りで悠月の隣に降り立つ。その間にもゆるゆるとツライナーは立ち上がり、二人の隙を伺っている。

「身体能力も上がってるっぽい、けど！」

　二人はツライナーに接近して、蹴りとパンチを叩き込んだ。ツライナーはパチパチとその身体を四散させて小さい星の塊になって消えた。

「ネコキュアに変身すると身体能力が変身前よりずっとずっと高くなるワン！」
「確かにこれなら戦えるがこの格好は効率が悪いだろう……」
「こんな格好で動き回れるかっつーの！」

　二人の服装は大凡戦闘に向かないことが一目で判る、フリルとレースのふんだんに使われた可愛らしい衣装だ。ふわりとしたスカートは風に靡き、その下のそれが見えそう……で見えない不思議な作りになっている。特に現在、男性の身体のまま、女性の下着を身に着けているアカリにとってそれは一大事だった。彼は顔を赤くしてスカートを押さえている。
　ふと、二人の耳に怪人の声が聞こえた。徐々に近づいてくる怪人の姿は、さっきの敵よりもより具体的な姿を持って二人の前に現れる。それは黒薔薇の生えた巨大なマイクだ。悠月は地を蹴り、怪人の――マイクのスイッチ部分にあたる部位にパンチを叩き込むが、怪人はびくともしない。相手のこぶしが悠月に当たる。悠月は吹き飛ばされ、アカリの隣を過ぎ、重い音を立てて地に転がった。

「くそっ……ふざけた見た目の癖に意外と強いな」

　ふらふらと立ち上がるが、また攻撃を繰り出すには少し時間が必要だった。悠月に代わって、今度はアカリが敵を柔術の要領で投げ飛ばすが、敵はなんてことのないように立ち上がってアカリを殴り飛ばす。

「いって……！」
「ネコキュア！　必殺技を使うんだ！」

　殴られたところを摩っているアカリと、ぎりりと渋面している悠月の隣にシャチとサモエドのマスコットが近づいてきた。

「必殺技……？　そんなんあるのか？」
「あるワン！」
「必殺技なら倒せるのか？」
「あの位の敵なら一発ワン！！」

　アカリは苛立ちを隠さずにマスコットに言う。今にもポカポカ殴り出しそうだった。

「なら最初から言えっつーの！」
「そういうものだから仕方ないワン！」
「お約束ってやつだね！」

　そういうものだと、お約束だと言われても、ピンチの中にある二人には関係のないことである。アカリはとうとうサモエドの頭にチョップを入れた。

「……って、知るか！」

　痛がってぴいぴい泣いているサモエドに罪悪感が湧いたのか、アカリはチョップしたばかりの頭を撫でて、優しく聞く。

「で、方法は？」

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