いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな｜リアクション

いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな

◆天精、降臨

『魔法少女といえば変身！　……とは限らない！　自前の衣装とステッキで登場……そういうのもあるのか！　ならば私たちはじゃんじゃんカメラをまわしましょう！　記録は大事です！』

　ゆかりは相も変わらず軽薄でキンキンの、聞いていて頭を痛めそうな声を響かせている。

『さあその枷から自らを解き放て！　レリ』

　ざああ、ざあああああ、ざあ……。ゆかりの言葉の途中、画面を砂嵐が襲った。砂嵐が晴れ、再び戻ってきたゆかりはややしょんぼりしながらマイクを持っている。その前を、怪人の群れが通っていった。

　あからさまに怪しい黒服。わざとらしいほど荒廃した風景と、絵のようなポップなUFO。怪人だって、怖いどころかどこかコミカルだ。ツッコめるところは山ほどあった。黒服の言葉だって、嫌だと思えば拒否できただろう。
　しかし、求められたら力を貸すのが筋――葛城璃人はそう考えて、ふわり。いつものパステルピンクのスカートを翻して、怪人の蠢くその群れの中、飛び込んでいった。光の輪の中を通り過ぎ、煌めく粒子をはじけさせながら、その真ん中に着地する。

「魔法少女と書いてソルシエールと読む……『魔法少女りぃ』、行きますですよ！」

　璃人は怪人の注目が集まっている中、自らの手を高く上げて唱えた。

「メットル・ユヌ・ヴォレー☆」

　すると、その手に翼飾りが目立つ可愛らしいステッキが握られる。璃人が着ている衣装に似合いのそれは、召喚する際の呪文の意味に違わず、怪人の脳天に振り下ろされた。

「シューマーイ！」
「ジョソーッコ、カワイーイ！」

　焼売怪人がこと切れると、返す刀……もとい杖で女装っ子大好き怪人のこめかみに叩き込む。すると、怪人はどこか幸せそうな表情をしながら、その場に倒れていった。

「りぃがこの悪夢から目覚めさせてあげるのです！」

　ぱちりと星が飛ぶような可愛いウインクをして、璃人はステッキの底部を怪人に向け、そのまま槍投げの要領で投げつける。

「そぉれ、ドリーミーエトワール！」

　璃人の手を離れた魔法のステッキは、びゅうんと飛んでいって巨大な熊の姿をした怪物の心臓部に刺さった。璃人は軽やかにジャンプして倒れた熊の身体からステッキを抜き、宙でくるりと一回転した拍子にその足元にいた怪人を踏みつける。着地。そしてまたステッキを振り上げ、眼前に居た怪人を殴りつけた。

「オランジェット！」

『可愛らしくも、バイオレンス！　だがそれが良い！　……おおっと……ここで男の娘魔法少女がもう一人！』

　変身しなければ戦えないなら、弱者なのだろうか。弥逢遊琳は煩悶する。右手の小指に嵌ったピンキーリングをちらと見て、その存在に力付けられた。例えそうでも。遊琳は思う。
　――この力でしか守れないものがあるのなら、如何なる誹りも甘んじて受けよう！
　遊琳はピンキーリングを抜いてその手に握り締め、高らかに叫んだ。

「手遊びの音、瑶鳴の琳……！」

　すると、手の中のピンキーリングが広がり、その輪が遊琳を上から下へ通り抜ける。輪が通ると、遊琳の服が変身前に着ていたそれから、純白のドレスへと変わっていった。彼の爪先を通り過ぎた輪は光の粒子となり、胸元へ飛んで行く。

「……春霖」

　変身を終えた遊琳が杖を高く掲げ、呪文を唱える。ヘドロのような敵の頭上に、無数の鈴蘭の花が召喚され、そのまま弾丸の雨として降り出した。うつくしい白い花で埋め尽くされたヘドロは、そのままじわじわと消えていく。遊琳は鈴蘭の雨から逃れ、その場を荒らし続けている敵に杖の先端を向けた。

「光よ花咲け！」

　遊琳が叫ぶと、その杖の先端から光の渦が放たれて敵を焼き尽くす。流星の如く尾を引いたそれは、光が消えた後もその名残を煌めかせていた。

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