風と共にろっこん｜リアクション

風と共にろっこん

　七夜あおいから抜け出た金ぴか風船をバイバーイと見送って。
　八神修とあおいは、互いのろっこんを使ってみたいという希望が一致して、自分たちの風船を探し回った末漂っていたのを『あれ俺（私）のだ！』と発見した。

「あおいのろっこん一度使ってみたかったんだよね」
「男の人なら、元々力ある印象だけど」
「ふ……同じように鍛えていても、筋肉のつきやすい体質・つきにくい体質ってあってな……」

　あおいのろっこんくらいのパワーは憧れる時があるんだよ……なんて、少し遠い目をしながらおもむろに自分の袖をまくり、力瘤を見せてみる修。
　心の効果音はムキッであったが、実際は小さな力瘤がぽっこん。
　男性の力瘤を触れる機会などあまりないからか、あおいが面白そうにツンツンと触ってきたのを、くすぐったそうに笑ったり。

「でもやっぱり男の子だねー。女の子とは硬さが違うもん」
「ん、有難う」

　それぞれのろっこん風船、あおいの赤色のを修が、修の白色のをあおいがそれぞれ持てば、同時に割ると距離的に元の持ち主に戻っちゃうかもだから、と順番に割った。

「そういえば修君は、私のろっこんで何してみたい？」
「さっきから実は色々考えてみてはいるんだけど……部屋の本棚を移動させようか……
　人助けも出来そうだな、とか。大型車の下に落ちて入り込んだ物を車体持ち上げて取ったりさ」
「そ、そっか、私あんまり考えた事無かったかも……！　もしかして、実は色々出来る？」
「うん。あおいのろっこんは皆の役に立つ素晴らしい力だね。女の子が持ってても素敵だ。
　強くて優しい女の子って魅力的だよ」
「そ！　そんなに褒めてもなんにも出ないよ！？」

　ひゃ～～っ、と頬を両手で抑え照れ笑いを浮かべる彼女を見れば、その笑顔を向けてくれるだけで十分幸せだからと心の中で囁きながら。

「逆に俺のろっこんって、最初は破壊の力ってイメージがあって一寸嫌だったんだけど」
「え？　そう、なの？」
「でも……ある時、土砂崩落箇所の救助口をあけるのに使ってさ、使い方によっては皆の役に立つって思えるようになったんだ」
「そうだよ！　修君のろっこんだって素敵だよ！
　ううん、そういう使い方が出来る修君が、きっと素敵なんだと思う！」
「あ、ありがとうな……って、褒めても何も出ないぞ？」
「えへへ、お返し？」

　ぺろりと小さな舌を覗かせ『でも本当にそう思うんだよ？』とおどける様子には、『くっ……可愛……っ』と衝動がこみ上げてくるのを、鋼の理性でどうにか抑え込む修がいたりも。

「あと俺のろっこん、進化したから分解した物を動かせたりもするんだ」
「ええ！？　すごーい！」
「海岸掃除に使った事とかあるよ。大型ゴミを細かくして袋にひゅーんってね」
「それ、私やってみたい！　出来るかなっ？」
「持ち主な俺がそばでコツをレクチャーすれば、意外と出来るかもな」

　本日のお互いのろっこんお試し場所が決定した。
　大きなゴミがありそうな所を綺麗にしよう！　と意気込むあおいの隣りを、修は微笑ましそうに歩調合わせついていく。