あなたの図書室｜リアクション

あなたの図書室

　寝子高の昼休み。
　綾辻綾花は、図書委員の仕事をするため図書室にやってきた。

　受け付け業務をしたり、時間があれば返ってきた本を棚に返したり。
　本の場所に案内したり「図書室ではお静かに」と優しく注意したりするのも綾花の仕事だ。
　今日はそれに加えて、アンケート用紙を配る仕事もあった。
「図書館に入れて欲しい本のアンケートをしています。よかったら書いてくださいね」
　受付で借りる人に渡したり、持ち歩いて配ったり。
「本のタイトルのように具体的でも、にゃんこの登場する小説、など大まかでも大丈夫です」
　説明していると、早川珪先生が顔を出した。
　今日も赤のシャツと黒のスーツが良く似合っている。
　大学生かホストのようだと言う人もいるけれど、珪先生はとても素敵で、見かけは若くても大人な先生だと綾花は思う。
「珪先生も、よろしくお願いします」
「僕もかい？」
　アンケートを渡された早川先生は、一瞬驚いた顔になり、笑顔を見せる。
「生徒に読んでほしい本でも好きな本でも構いませんよ。私も書くつもりです」
「ありがとう。綾辻さんは何て書くの？」
「寝子島関連の本は増やしたいですね。あとにゃんこの写真集とか……無記名でも私だと分かりそうです」
「猫好きな子は他にもいるだろうけど……綾辻さんのはわかるね、きっと。それじゃまた後で」
　微笑みを残し、早川先生はそう言って出て行った。
（えっ？　先生……どうしてわかるんでしょう？）
　ドキドキする綾花。
「すみません、本返したいんですけど」
「はっ……はい」
　我に返り、図書委員の仕事に集中する。

　図書委員長の恵御納夏朝も図書室にいた。
（委員長としてできる事、何かあるかな？）
　他の図書委員さんの希望を優先して希望が少ない所をカバーできればと、図書の整理に精を出す。
　図書室や本等の状態もさりげなくチェックして、気付いた事があればメモする。
（後で先生に伝えたり、可能な範囲で対処したい……）
　声が大きい人にはそっと声をかける。
「ごめんね、図書室ではお静かに」
（何回も騒ぐようならさすがに怒らないとだけど、うっかり声が大きくなった位なら注意で済ませたいかも）
　図書室が居心地のいい場所であってほしい、と気遣う夏朝であった。

　他の人への応対がない作業時は、作業を進めながらも委員長として何ができるか？　も考えている。
（他の委員会みたいに、腕章……とかどうかな）
　図書委員に腕章ってなじまないかな？　とも思ったり。
（文字だけでなく、猫のマークがついてたら可愛いかも）
　つい可愛いデザインを考えてしまい。
（いや、それより目の前の作業だ……）

　夏朝は綾花に声をかけた。
「綾辻さん、おつかれさま。アンケート、どんな本の希望が来るのか……楽しみだね」
（好きな本について語りたい人もいるなら、是非とも聞いてみたいな）
　と思いながら。
「はい、楽しみですね」
　綾花もにっこりと返事を返した。

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