回転寿司いこっ！｜リアクション

回転寿司いこっ！

　――とある休日、お昼時（その３）

　ねこ寿司の幟がはたはたと揺れて、呉井陽太の目と、足を止める。
「おー、ここの回転寿司のお店、キャンペーン中なのかー」
　そういえば最近お寿司食べてないなぁ、と陽太は顎に手を宛がった。
（折角だし、入ってみよーかなぁ？）
　一歩足を踏み出そうとした、その時。
「――あれ？　初ちゃんと一閃さん？」
　という具合で、陽太はねこ寿司の前に、犬杜初と犬杜一閃の姿を見留めた。
　一閃が小さく頭を下げるのに倣って、次いで陽太は、初へと声を投げる。
「初ちゃん達もお寿司食べに来たのん？」
「うん、そう。うい、キャンペーンのボールペン狙ってるから」
「へえ、そうなんだぁ。オレもお寿司食べたいなーっと思って今から入る所なんだけど……」
　よかったら一緒に食事してもいいかな？　との陽太の言葉に、「へ？」と初が瞳を瞬かせた。
「ういと、一緒でいいの？」
「ん、なんていうか、ちょっと話したいこともあってねぃ」
　そうして３人は、連れ立って店内へと。
　テーブル席に腰を落ち着かせて、陽太は目の前に座る初達へと真摯な眼差しを向けた。
「初ちゃん、一閃さん。この間は、話を聞いてくれてありがとう」
「いや、礼を言われるようなことは、何も……」
　一閃がぽつと言葉を零し、初が同感だとばかりにこくこくと頷く。
「だけど、初ちゃんの気持ちを直に聞けて、やっと自分の中で踏ん切りがついたから」
　そう目元を和らげて、陽太は「そうだ」と声に明るい色を乗せた。
「翼獣達とも、ちょっと前にまた再会したんだよぅ」
「本当？　その……ういが聞いていいことじゃないかもだけど、あんたの友達は？　どうしてた？」
「うん、元の世界で暮らしてたのを見てきてね、あっちの世界に異変が起こってたんだけど……」
　陽太の話に、初は半ばは身を乗り出すようにして、一閃は真っ直ぐに陽太の顔を見て、それぞれに聞き入る。
　やがて、陽太が事の顛末を語り終えると、
「……そう、そっかぁ……」
　と、初は、小さく何度も頷いて、少しだけ茶をすすった。
　それを目に、陽太は自分も喉が渇いていることと、まだ誰も皿を取っていないことに気付く。
「わー、話しこんじゃってごめんよぅ……！」
「ううん。あんたの話、聞けて良かった。だから、その……ありがとう」
「なら、良かった。でも、せっかくお寿司屋さん来たんだから、どんどん食べないとだよねぃ」
　二人はどんなネタが好きなのん？　との陽太の問いに、初の表情がぱっと輝いた。
「ういはね、甘いのが好き！　サーモンとか、生海老とか、玉子とか！」
「わ、奇遇だねぃ。オレもサーモン好きだよぅ。あと、マグロといなりずし♪」
「わかる、マグロは外せない！　お兄ちゃんは、イカとか光り物とかよく食べるよね？」
　一閃が、初の言葉にこくりと頷く。そして、
「わ、ここってサーモンの種類が豊富なんだねぃ。これ、チーズが乗ってる？」
「そうそう！　それでね、なんか炙ってあるの！　この前食べたけど美味しかった！」
　わいわいと、お腹いっぱい寿司を味わう３人。
　帰りに引いたくじは、初と一閃は残念賞のサンマさんシールだった。
「うう、悔しい……！」
「あはは、残念だったねぃ。やっぱり、当たりを引くのは中々……って、え？」
「何？　どうしたの？」
「え……？　これは、まさかの……！？」
　陽太の反応を不思議がるようにして、くじを、隣から初が覗き込む。
　うそ！？　と初は陽太の顔を見て――互いに驚いた顔をしているのに、互いが一度に噴き出した。
　陽太のくじは大当たり、貰えるのは金のサンマさんボールペンだ。
「あ、そういえば初ちゃん、ボールペン狙ってるって言ってたよね？」
「え？　うん、そうだけど……」
「なら、このボールペンは初ちゃんにプレゼントするわー」
「え？　え？　ほんとに！？」
　ありがとう、と、初の顔に、はにかむような笑みが乗った。

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